電気自動車(EV)用バッテリー最大手「CATL(寧徳時代)」の株価が5月31日午前に過去最高となる1株429元(約7360円)をつけ、時価総額が初めて1兆元(約17兆1700億円)の大台に乗った。中国の新興企業向け市場「創業板(チャイネクスト)」の上場企業としては初の1兆元超えだ。同日の取引終了時点では5.98%上げて434.1元(約7450円)をつけ、時価総額は1兆112億元(約17兆3600億円)となった。

フォーブスの世界長者番付によると、これによりCATLのトップ曽毓群(ロビン・ゼン)氏は保有資産392億ドル(約4兆3000億円)となり、それまでトップだった著名実業家の李嘉誠氏を抜いて再び香港の長者番付1位に返り咲いた。

(画像:pexels)

このような状況にもかかわらず、投資銀行は依然としてCATLの先行きを不安視している。CATLが時価総額1兆元を突破したのと同じ日に、モルガン・スタンレーは同社の投資判断を「アンダーウエート(弱気)」に格下げしており、目標株価を251元(約4300円)とした。

これを受けてか、翌6月1日にはCATL株はわずかながら値を下げ、425.34元(約7300円)で取引を終えた。時価総額も9908億元(約17兆円)となり、1兆元を割り込んだ。

資本力で築き上げた帝国

中国の証券会社GFセキュリティーズ(広発証券)のアナリストによれば、バッテリー産業全体に対するCATLの積極的な投資戦略が、時価総額をここまで押し上げたのだという。CATLは投資によってサプライチェーン企業との安定した関係を構築し、業界での圧倒的地位を確実にしてきた。さらに個人投資家の信頼を勝ち得たことや、市場のプラス材料が重なったことにより、CATLの株価は高値で推移してきた。

ある統計データによると、2018年以降にCATLが出資もしくは合弁で設立した企業は45社を超え、設立した完全子会社は10社以上になるという。これらの企業は駆動用バッテリー、リチウム電池材料、バッテリー充電・交換、自動運転、半導体など幅広い分野に及び、各プロジェクトへの投資額を合計すると総額2000億元(約3兆4300億円)以上に達する。

CATLの財務報告書によれば、この数年同社の純利益は増加の一途をたどり、2018年は33億8700万元(約580億円)、2019年は45億6000万元(約780億円)、2020年には55億8300万元(約960億円)と推移している。今年第1四半期は19億5200万元(約330億円)で、前年同期比160%以上も増加した。

市場シェアも順調に伸ばしている。韓国の調査機関SNEリサーチのデータによると、今年第1四半期にCATLの駆動用バッテリー搭載容量は、前年同期比320.8%増の15.1GWhで、市場シェアは前年の25%から31.5%にまで拡大した。中国国内における市場シェアは52.6%と、駆動用バッテリー業界でトップに座している。

ひしめくライバル

一方でモルガン・スタンレーがCATLの先行きを不安視している主な理由は、EVバッテリーそのものが新興産業という特性上、バブルへの懸念が拭えず、株価の変動も激しいからだ。

EV実用化の初期段階では、自動車メーカーは車載電池メーカーからのバッテリー調達に依存していたが、ニーズの拡大とともに電池業界にも参入するようになり、その発言力を増してきた。このこともCATLにとっては不安材料となっている。

ダイムラー、フォルクスワーゲン、テスラ、GM、吉利(Geely)、比亜迪(BYD)など大手自動車メーカーは、駆動用バッテリーの自給自足を目指して続々と自社バッテリー工場の建設にかじを切っている。比亜迪は今年下半期から、次世代の車載電池「ブレード・バッテリー」を社外にも供給し始めることを発表した。

バッテリー業界ではCATLに次ぐ韓国LG化学も、CATLの地位を虎視眈々と狙っている。韓国メディアETNewsによれば、LG化学は同社初となる4元系電池(NCMA)正極材の商用生産にこぎ着け、7月にもテスラ向けに供給を始めるという。

比亜迪やLG化学以外にも、パナソニックやサムスンなど強力なライバルは数多い。これら数社のバッテリー生産能力は2023年までに4倍以上増加して1253GWhに達すると見積もられている。

この状況を打開するには、製品力を向上させるよりほかない。CATLは今年7月にナトリウムイオン電池の発表を予定しており、バッテリー業界に技術革命をもたらすことになると曽毓群氏は語っている。
(翻訳・畠中裕子)