EV(電気自動車)世界最大手の米テスラは2012年に中国市場に進出した。2019年には上海に製造拠点ギガファクトリー3を建設。中国進出からすでに10年近くなるが、同社にとって中国市場はますます欠かせない存在になっている。

浙江省で先月開催された「2021年世界インターネット大会」で、テスラのイーロン・マスクCEOは再び中国への「偏愛」を示した。同社は今後も引き続き中国への投資を拡大し、すでに中国にデータセンターを設立したと述べている。同月に海南省で開催された「2021年世界新エネルギー車大会」でも、「中国の自動車メーカーは世界で最も高い競争力を有している」と発言した。

中国政府は2009年、新エネルギー車振興策を本格化させ、大規模な補助金を投入し始めた。2009年から2019年までの10年で1000億元(約1兆7500億円)以上を投じたといわれている。しかし、補助金を不正受給する企業が跡を絶たず、真剣に新エネルギー車製造に取り組む企業は少数だったため、補助金政策は技術力や競争力強化につながらなかった。そこで市場を刺激してナマズ効果を引き起こしてくれる、テスラのような存在が必要になったのだ。

そのテスラは2018年、倒産の危機に瀕していた。製造が需要に追いつかず、調達した資金で生きながらえるも、管理職が辞職したり、リコール問題が起きたりなど問題が多発。マスクCEOは後にこの時期を振り返り、「あと1カ月で倒産するところだった」と発言している。

そこでマスクCEOが目をつけたのが中国市場だ。中国側がまさに「ナマズ」を欲していたタイミングだった。テスラが上海に工場を建設するプロジェクトはすぐに決まった。テスラは中国で初めて、外資単独で中国に参入した自動車メーカーとなったのだ。

2018年7月に上海市政府との協議が締結し、テスラの新工場ギガファクトリー3は2019年1月に着工、同年8月に竣工した。テスラは上海市との協議締結後、中国建設銀行(上海浦東支店)、中国農業銀行(上海支店)など複数の銀行から貸し付けを受け、総額5億2100万ドル(約600億円)の支援を得た。

ギガファクトリー3の完成と中国の金融機関からの手厚い支援により、テスラの中国市場での成長はさらに力強いものとなった。2020年、テスラの中国市場での販売数は世界全体の3分の1を占め、北米に次ぐまでに成長した。販売数増加とともに利益も伸びており、中国事業の利益は2016年の11億ドル(約1200億円)から2020年には67億ドル(約7600億円)にまで伸び、世界全体の売上高の21%を占めるまでになった。さらに今年第1四半期には中国市場での売上高は30億ドル(約3400億円)となり、世界全体の売上高の29%にまで成長した。

テスラと中国の提携はウィンウィンの結果をもたらした。テスラは倒産の危機を脱し、販売台数も時価総額も過去最高を記録。一方の中国ではギガファクトリー3の誘致がきっかけで新エネルギー車産業の統合・淘汰が進み、EVメーカー御三家「蔚小理(蔚来汽車、小鵬汽車、理想汽車)」に代表される競争力ある企業が生き残った。

ギガファクトリー3は現地市場の大きな需要に応えるだけでなく、海外への供給でも欠かせない存在だ。テスラのグローバル戦略で重要視されている欧州市場へはこれまで米国工場が供給を担ってきたが、コロナ禍でそれが難しくなった。テスラは世界4カ所の工場のうち、上海を除く3カ所が米国にある。5カ所目となる独ベルリンのギガファクトリーはもともと今年7月から稼働予定だったが、現段階では年末にまでずれこむと目されている。そのため、欧州市場への供給は上海のギガファクトリー3が担っている状況だ。

昨年10月からテスラは中国製完成車を輸出しはじめた。1四半期あたり約3〜4万台を欧州や日本に供給している。

今年に入り、テスラはさらにギガファクトリー3の供給力に頼っている。今年第1四半期の財務諸表によると、ギガファクトリー3の年間生産台数は45万台で、テスラ全体の生産台数の42.86%を占めるようになっている。

現段階ではテスラは中国市場を離れられず、上海のギガファクトリー3とも切っても切れない関係だといえるだろう。

作者:WeChat公式アカウント「鋒出行(ID:fengchuxing2021)」、馬過海
(翻訳・愛玉)