中国最大のECセール「独身の日(ダブルイレブン=双11)」で、アリババのECモール「天猫(Tmall)」は今年、過去最高となるGMV 5403億元(約9兆6600億円)を記録した。これにより大きな負荷がかかるのが物流業界だ。

アリババは配送効率を高めるため、傘下の研究機構DAMOアカデミー(達摩院)が開発した自律走行型配送ロボット「小蛮驢(XiaoManLu)」を中国各地の大学200校以上に投入した。ECプラットフォームで注文された荷物はアリババの物流ネットワークを通じて発送され、地域のサービス拠点「菜鳥ステーション(菜鳥驛站)」に届いた後、配送ロボットが末端配送を担当する。配送ロボットが宿舎棟入口などの受け取り地点に到着すると、受取人に自動で電話がかかるようになっており、受取人はバーコードをスキャンして荷台を開け、自分の荷物を取り出すだけだ。

小さなボディに最先端の技術

宅配量の増加と労働力不足を受けて、業務無人化のニーズは高まっている。自動運転レベル4など高度な自動運転機能に関しては、乗用車よりも運送車両、旅客輸送より貨物輸送、高速車より低速車のほうが先に大規模実用化を果たす、というのが業界共通の見方だ。このためアリババはまず末端物流に着手した。

情報によると、350台あまりの小蛮驢が10日間で100万個以上の荷物を配達したという。平均すると1台が1日300個近くを配達したことになり、自動運転レベル4の活用規模と業務量としては過去最高となった。

ダブルイレブンセールの1週目は全国的に冷え込み、配送ロボットは強風や雨、雪、霧にさらされた。配送ロボットの7〜8割が雨天時の作業を強いられたものの、スムーズに配達業務を完了した。

さまざまな環境、気象条件のもとでも同じ業務を完遂するには、アルゴリズムやシステム、ハードウエア、メンテナンスを含むトータルな技術力が求められる。このためDAMOアカデミー自動運転実験室では一連のハード・ソフトウエアを開発した。車載カメラに使用する画像処理プロセッサを独自開発して、自動運転の配送ロボットが夜間でも「視力」を保てるようにし、走行時の安全性を大幅に高めることに成功した。

障害物の識別には、DAMOアカデミーの3Dポイントクラウド・セマンティックセグメンテーション(PCSS)技術を活用している。LiDARで収集した点群データを基に、異なる視野角の3Dポイント特性を組み合わせて表示能力を増強し、障害物認識の精度を高めている。

左図:通常時、右図:セマンティックセグメンテーションで人や車などを正確に識別

これらの技術を搭載した小蛮驢は、わずか3センチ幅の警戒線も難なく識別して迂回できるようになった。

またGPSとマルチセンサーデータを融合させた測位アルゴリズムにより、センチメートルレベルの位置特定が可能になったほか、関連する高精度測位デバイスも開発したことで、業界平均より10%低いコストで同水準の測位レベルを実現した。

センサーや測位はアルゴリズムがカギを握る。アルゴリズムを改良する上で重要なのがデータだ。特に自動運転の実用化においては特殊ケースも含め、想定されるあらゆるデータが必要になる。

実際の運用においては、特殊なケースに遭遇するまでに1カ月以上かかることもある。DAMOアカデミーはシミュレーションプラットフォームを開発し、バーチャルの世界で自動運転車両が走行距離と経験を積み重ねられるようにした。プラットフォームでは悪天候や夜間など特殊なシーンをわずか30秒で構築してテストでき、1日に対応できるシーンは100万件以上、800万キロメートルの走行テストをシミュレーションできる。

このほか、独自開発の自律走行用機械学習プラットフォーム「AutoDrive」が、それまで手作業で行っていたアルゴリズムのパラメータ調整やモデル最適化を代替し、アルゴリズムの開発効率が向上した。

小蛮驢の活用場面は荷物の配達だけにとどまらない。最近、感染症予防の政策に呼応する形で四川省や浙江省などの学校が小蛮驢の導入を決めており、食堂で準備された食事を学生寮や職員棟などに配達することで、人との接触を減らす試みがなされている。

アリババによると、長距離の幹線輸送に特化した無人トラック「大蛮驢」の研究も始まっているという。

作者:量子位(WeChat ID:QbitAI)
(翻訳・畠中裕子)