玉ねぎに含まれる栄養素には、役立つ作用がある反面、とりすぎてしまうと体調をくずす危険性もあるのだとか!

管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、玉ねぎの食べ方によって体にどのような悪影響が及ぶのかと、1日に食べてもいい量の目安について紹介してもらいます。

免疫力増進や美容に!玉ねぎを食べる「メリット」

玉ねぎは、肉厚でやわらかい葉が重なった地中の鱗茎(りんけい)という部分を主に食用とする野菜です。

玉が大きくなる前に地上へ伸びた緑色の葉つきの「葉玉ねぎ」もありますが、通年流通しているのは葉が刈り取られた玉ねぎだけ。

また、春頃に収穫される水分量が多くてやわらかい玉ねぎは「新玉ねぎ」として知られていますが、そのほかの時期には、皮を乾燥させて貯蔵性を高めた玉ねぎが出回っています。

独特の香りと辛味(生食の場合)や甘味が特徴的な玉ねぎには、おもに次のような栄養素が含まれています。

・ビタミンB6
・食物繊維
・ビタミンC
・銅
・葉酸

これらには、免疫機能の正常な働きの維持、皮膚の抵抗力を高める、腸内環境を整える、貧血や動脈硬化を防ぐ、などといった働きが期待できますよ(食物繊維、ビタミンC、葉酸については、一般的な玉ねぎよりも葉玉ねぎにより多く含まれています)。

また、香りや辛味の元となるのは硫黄を含んでいる硫黄化合物(アリインやイソアリインなど)で、玉ねぎを切ったりすり潰すなどの調理をすることによって、ビタミンB1の吸収率を高めて働きを持続させる成分などへ変わっていきます。

そのため、豚肉や玄米などのビタミンB1を多く含む食品と組み合わせることで、糖質がエネルギーへ変わるのを促進したり疲労回復を助ける働きを高めることができるでしょう。ただし、水に溶け出しやすい性質があるため、辛味抜きのために水にさらすと効果はあまり期待できません。

さらに、血糖値やコレステロールの上昇を抑え、血流を改善する働きも期待できるでしょう。

このように、玉ねぎを上手に取り入れることで、美容や健康増進に役立てることができるのです。

腹痛や頭痛も?玉ねぎを食べすぎる「デメリット」

多くのメリットが得られる玉ねぎですが、過剰に摂取したり体質によっては思わぬデメリットが生じることもあります……。

胸やけや腹痛などが起こる

先述のようなメリットのある硫黄化合物には、強い殺菌作用もあります。体内に侵入した細菌やウイルスなどの構成タンパク質と結合し、感染などを防いでくれることが期待できるのです。

ところが、とりすぎてしまうとデメリットが起こることに……。

殺菌力が胃や腸に強い刺激となってしまったり、腸内の善玉菌にも影響を与えることがあるのです。それらによって、胸やけ、腹痛、下痢などの胃腸障害が生じることが考えられます。

さらに、そのときの胃腸の調子や体の疲れ具合によっては強く症状が出やすくなるため、そういった場合はとくに注意しましょう。

口臭や体臭がきつくなる

硫黄化合物は、食べるときに香りの元になるだけでなく、消化・吸収されると臭いの原因になることも……。

臭い成分は、通常はガスとしておならで排出されますが、食べすぎた場合には血液中に溶けて全身を巡り、汗と一緒に皮膚から排出されて体臭となったり、肺から排出されて口臭となってしまうのです。

また、消化器などが弱まっている場合にも、臭いの元が生まれやすいといわれています。

玉ねぎを食べた直後は、歯に挟まった食べかすを歯磨きで除去すればすみますが、食べすぎた翌日の体の中からの臭いにも注意が必要です。

頭痛の原因になる

玉ねぎを食べすぎると、玉ねぎに含まれている硫黄化合物や「チラミン」という成分によって頭痛が引き起こされることがあります。

これは、成分の作用によって血管が収縮したり拡張したりすることが原因とされ、急激な血流の変化で神経が圧迫されて頭痛を感じやすくなってしまうのです。

たくさん食べた直後よりも、しばらく時間が経ってから頭痛が現れることが多いため、その場合は食べすぎが原因の可能性があるでしょう。

玉ねぎを楽しむ量とタイミングは?

上記のとおり、玉ねぎに含まれる栄養素や成分にはメリットとデメリットの両方があります。

そこで、ここからは玉ねぎを楽しむ量とタイミングについて解説していきます。

健康な成人は1日にどれくらい食べても大丈夫?

デメリットを防ぐためには、成人の場合、玉ねぎを食べる量を50g程度(中玉1/4個分)に収めるといいでしょう。
ちなみにこれは、切ってすぐに生の状態で食べる場合の目安量となります。

胃腸障害や頭痛などの原因となる成分は、刻んだり潰すことなどによって生成されますが、その後、水や空気に長時間さらしたり加熱することによって減らすことが可能です。

そのため、こういったひと手間を加えて食べるのであれば、いくらか多めに食べても不快な症状が起こりにくいことが考えられます。

ただし、1日に推奨される野菜の摂取量(※)から考えれば、玉ねぎは200g程度(中玉1個分)としておくことがおすすめです。野菜の摂取源が玉ねぎばかりにならないよう、バランスよくさまざまな食材を取り入れる観点からも、十分に加熱した場合などであってもこれを目安としてみてくださいね。

※……国民の健康増進を目的として定められた「健康日本21(第2次)」の中で、成人1日あたり350g以上が目標とされ、そのうち緑黄色野菜が120g以上を占めるのが望ましいと示されています。ちなみに、玉ねぎは緑黄色野菜に該当しないため、差し引いた数値で目安量を求めています。

どのタイミングで食べるのがいい?

ストレスや疲労がたまっていたり、アルコールやコーヒーの飲みすぎなどで胃腸が弱っている時には、玉ねぎの生食にとくに注意が必要です。こういったタイミングで食べすぎてしまうと、腹痛や下痢などが起こりやすいといわれています。

そのため、デメリットをできるだけ避けたいのであれば、「心身ともに体調がいい日」を選ぶことが大切です。

さらに、生で食べるときには「最初に牛乳などの乳製品やほかの食事などを口にする」と、後から食べる玉ねぎの胃粘膜への刺激を和らげることが期待できるでしょう。

より安心して食べたいときや量を多くとりたい場合には、しんなりとやわらかくなるまで玉ねぎをよく加熱して食べるようにすれば◎(ただし、チラミンに関しては加熱しても減らないため、食べる量はほどほどに)。

目安量や食べるタイミングを押さえておけば、玉ねぎはメリットが多い食品です。玉ねぎのメリット・デメリットを理解し、上手にとり入れてみてくださいね。

■執筆/監修・・・
管理栄養士・ゆかりさん管理栄養士、食生活アドバイザー。一女のママで出張料理、料理教室、講演、栄養相談も手掛けるほか、ライターとしても活動。

構成/サンキュ!編集部