サンキュ!で特集を組むこともある「やめ家事」。家事に対する“やらなければいけない”という思い込みを捨てて、スパッとやめることで暮らしが向上するというものです。

恋人・夫婦仲相談所の所長である三松真由美さんにいわく、この「やめ家事」は夫婦関係の改善にも役立つんだとか。解説してもらいました。

「“みんな”こうしている」が夫婦関係を壊す!?

筆者の経験上、“家事”が夫婦関係がギクシャクする原因になっていることは少なくありません。たとえば「夫がまったく家事をやらない」というのは定番ですが、それ以外にも家事に対する偏った思考から、自分自身を追い詰めてしまうケースもあります。

自分の親がこうしていたから、テレビや雑誌・WEBの記事で見たから、ママ友はやっているから……などなど。「主婦/主夫は“みんな”こうしている」という思考です。

夫婦の数だけ夫婦関係があるように、家事だって家庭によって千差万別。断言しますが、「みんなこうしている」という考えは、ただの思いこみ、妄想です。

この偏った思考から解き放たれたことで、生活がグッと楽しくなり、さらに夫との距離が近づいたという話をご紹介しましょう。

ケース1:自分の信じる幸せは、家族にとって不幸せだった?

芽実さん(仮名/30代後半)は食べることが大好き。自分自身もおいしいものが食べたいし、家族にもおいしいものを食べさせたい――いつもそう考えながら、料理に励んでいました。

彼女がそう考えるようになったのは、母親の影響です。母親の口癖は「ウチはエンゲル係数が高いから」で、そう話すときの姿はちょっと誇らしげに見えました。母親は夕方までパートをしていましたが、家に帰ったら父親の帰宅までにおつまみを準備し、夕飯のおかずは3、4品つくります。めぐみさんはそれが当たりまえだと思い、それが“幸せファミリー”であると信じ、「自分も家族を持ったらそうしよう!」と幼な心に決心したそうです。

現在、正社員でフルタイムで働いている芽実さんが帰宅するのは19時すぎ。帰宅してから料理をつくっていたら20時をすぎてしまいます。しかし、前述のとおり充実した食卓が“幸せファミリー”だから、つくらないわけにはいかない。そこで芽実さんが取った手段が「つくりおき」でした。“幸せファミリー”のために、週末の大半を1週間分のつくりおきに費やすことになったのです。

つくりおき以外にも家事はありますから、お出かけする時間なんてありません。子どもたちは週末になると、友だちの家に遊びに行ったり、習いごとにいったりしていました。そんな生活を続けていたある日、12歳になる娘から夕食時に「うちの家族って週末一緒に遊ばないよね。たまには、みんなで外でご飯を食べたいな。もっと仲よくしたいな」と言われ、芽実さんは気づいてしまいます。

自分が信じていた幸せは、子どもたちにとってはそうではなかった?

毎日食卓を家族で囲んでいて、それがいちばんいいことだと思っていたのに、子どもはそう思っていなかったのです。芽実さんは、週末の義務になっていたつくりおきをやめて、週末は子どもたちとめいっぱい遊ぶ時間に、そして自分自身が楽しめること(読者や動画視聴)をすると決めたのです。

食卓はどうなったかというと、平日の夜ご飯は冷凍おかずや買ってきた惣菜も活用し、寒い時期はつくりながら食べられるお鍋に頼るようにしました。「何が何でも自分がつくる」という思考から解き放たれると、時間にも心にも余裕ができました。

ちなみに夫の反応は「これくらいのほうが正直気がラクだよ。いつも君がこわい顔でキッチン立っていたから、なんだか申しわけないと思って……そのぶん、こっちも掃除とかマジメにやれって脅迫されてるみたいで」だったそうです。

「やめてみて夫の本音が出てきたんです。本当に刷り込みって怖いですよね。そういう刷り込みを子どもたちには植えつけたくないです」と芽実さん。夫婦関係も「夫と何もせずダラダラすごす時間ができて会話が増え、いい感じになりました」とより親密になったようです。

ケース2:「思い込み」を捨てたらつぎつぎと「不要」が見えてきた

優子さん(仮名:39歳)は夫と4歳の男の子、3歳の女の子の4人家族です。小さな子どもたちとの生活は毎日大いそがし。片づけてもすぐにものが散らかって、家の床はおもちゃだらけ。ふたりとも保育園なので洗濯ものも毎日大量です。

生真面目できれい好きな優子さんは毎日、朝早く起きて大量の洗濯物を干します。帰宅後、取り込んでたたむのは夫さんの役目。洗濯機には乾燥機能がありましたが、洗濯ものは太陽光で自然乾燥させるのがいちばん、と信じていたので使うことはありませんでした。

家族全員が順番にインフルエンザにかかってしまいます。夫婦2人で協力していた家事が一気に滞り、キッチンもリビングも大変な状態に。明日身に着ける下着がない……というところまで追い詰められて初めて、優子さんは乾燥機を使うことにしました。

するとどうでしょう、洗濯ものは驚くほどふっくらと気持ちよく乾き、しかもシワもなくてビックリ。乾燥機に対する誤った認識を正した優子さんは、「ほかにも思い込んでいることはないか?」と考えるようになりました。

いままですべての洗濯ものをたたんでいたけれど、それって必要?
すぐ使うタオルはたたまず専用のバスケットに入れてそこから取ればいいのでは?
アイロンがけが必要なものはハンガーにかけっぱなしでよくない?
保育園に持って行く子どもたちの着替えはクローゼットにしまわず、保育園バッグにそのまま入れるのが効率的じゃない?
掃除機をかける場所を日替わりにして、家全体に掃除機をかけるのをやめてもだれも困らないよね?

「今まではつねに『家に帰ったら、これをやらなきゃあれをやらなきゃ』と、家事の段取りを考えていました。でも、乾燥機をきっかけに、全部やらなくていいんだって気がついたら、とてもラクになりました」

以前はお互い家事に追われて、夫婦ふたりきりの時間をすごすことはありませんでしたが、現在は「夫といっしょにお笑い番組を観たり、子どもが寝てから1杯だけハイボール飲む時間もできました」と良好な模様。

暮らしに余裕がでれば、子どもだけじゃなく、夫にも意識を向けることができるようになるのです。

「わが家のやめ家事会議」で夫婦関係の改善を!

清潔な衣類を身につけ、整った部屋に暮らし、おいしい食事を楽しむ。どれも大切なことですし、そのために家事をがんばるのも必要なことです。しかし、必要以上にがんばりすぎたり、根拠のない思い込みのせいで自身の心と体に負担をかけ、家族関係にまで影響を及ぼすようであれば、見直しが必要です。

快適な生活のために必要な家事ですが、あえて一部をやめることで家族が幸せになれることは意外とたくさんあるはず。

そのためにも、「ママたちは“みんな”毎晩料理をつくっているよね」などと思い込まない。“みんな”妄想をやめて、「やめ家事」についてパートナーと話してみるのはいかがでしょう。「わが家のやめ家事会議」をするだけで、相手がどう思いながら家事をしているかを理解することもできるでしょう。

大切なのは家族みんなが快適に幸せにすごせること。子どもにとっては、ママがグッタリせず、ニコニコしてること。夫にとっては妻がやさしく癒やしてくれること。それだけでじゅうぶん幸せな家族かもしれません。

リビングが散らかっていても、テイクアウトが3日続いても幸せなものは幸せです。最近、夫婦関係がギクシャクしている人は、自分が“みんな”の呪縛に捕らわれていないか振り返ってみてください。


◆監修・執筆/三松 真由美
会員数1万3,000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、Webなど多数のメディアに出演、執筆。夫婦仲の改善方法や、セックスレス問題などに関する情報を発信している。『堂々再婚』『モンスターワイフ』など著書多数。

構成/サンキュ!編集部