雨が多い季節になると、よくニュースや天気予報で「〇mmの雨」という表現を耳にするようになります。でも、いったい何mmの雨で何が起きて、何mmの雨で災害の危険が高まるのか、わかりづらいですよね。

今回は、野菜ソムリエ・気象予報士・防災士の資格を持つ植松愛実さんに、いざという時に「これだけは聞き逃したくない」キーワードを教えてもらいました。

「やや強い雨」「強い雨」「激しい雨」…ありすぎる形容詞

ニュースや天気予報などで雨の強さを数字で表すとき、「1時間〇mm」といった表現が使われます。

その強さの雨を1時間溜め続けたら水深が何mmになるかという意味ですが、数字だけだとわかりづらいため、たとえば「1時間20mm以上30mm未満の雨」のことを「強い雨」と表すなどレベルごとに形容詞が決められています。

が、この形容の種類は全部で5つもあるので、一般の人にとってはなかなか覚えきれないのが現状です(5種類すべての一覧表は本記事の末尾に掲載しています!)。

もっとも強いレベルを表す「猛烈な雨」であれば気象に詳しくなくても「なんかヤバいかも」と感じることはできますが、それ以外はどの雨が危険なのか、どの強さで警戒をすればいいのか、わかりづらいのが事実。

そこで私のおすすめは、「激しい」という言葉に注目することです。

なぜこの言葉が便利かつ重要なのか、以下の項目で詳しく見ていきましょう!

歩くのも運転するのもしんどい…「激しい雨」

1時間30mm以上50mm未満の強さの雨のことを報道では「激しい雨」と表現します。

この「激しい雨」は、傘をさしていても濡れるし、道路は水びたしになるし、車のワイパーを速く動かしても前が見づらいし、もし家で寝ている間であれば雨音で目覚めるレベルの雨です。

つまりニュースで「激しい雨」と聞いたら、できるだけ外に出ない方がいい、ということ。

報道では感覚的にわかりやすくするため「バケツをひっくり返したような雨」と表現することもあります。

「激しい雨」は、ただちに命にかかわるような災害に結びつくことは少ないものの、何時間か降り続くと川の氾濫やがけ崩れにつながります。

つまり「激しい雨」は、川やがけの近くに住んでいる人にとっては、警戒すべきレベルの雨ということになります。

下水の処理能力を超える!「非常に激しい雨」

1時間50mm以上80mm未満の雨は「非常に激しい雨」と表現されます。

正直なところ、一般的にはさきほどの「激しい雨」と区別がつきづらいですし、家事や育児をしながらニュースを聞いていたら聞き間違えそうだなと(気象予報士である)自分でも思います。

そもそも「非常に」がつかない単なる「激しい雨」であっても危険が伴うことは先述の通りなので、「激しい雨」と「非常に激しい雨」を聞き分けようとがんばるよりは、もうあまり気にせず「激しい」というワードに反応するようにして身を守るほうが現実的だと個人的には思っています。

ただその上で、もし区別する余裕がある場合は、「非常に激しい雨」と言われたら日本の大部分では「下水の処理能力を超える」と思ってください。

つまり、側溝から水があふれて浸水したり、マンホールから水が噴き出したりして、山やがけが近くにない家でも危険にさらされるおそれがあります。

ニュースや天気予報では「滝のような雨」と表現されることもあり、水しぶきで一面真っ白になって前が見えなくなることも…。

ちなみに「非常に激しい雨」の1つ上は最上級の「猛烈な雨」で、ここまで来ると息苦しくなるような圧迫感や恐怖を感じる雨になります。

じつは複雑…合計で何mm降ったら危険?

ここまで「1時間あたりの雨の降り方」を基準に、どんな雨が危険かを解説してきました。

一方でニュースでは「どこどこで総雨量が何mmに達しました」と、1日または2日くらいの間に降った全体の雨の量が報道されることもあります。

そんな時、いったい何mm以上なら災害の危険があるのか…という話は、じつはかなりフクザツ。というのも、「その場所で普段どのくらい雨が降っているか」によってかなり異なるからです。

たとえば普段から雨の少ない地域では1日あたり150mm降っただけでも大規模な災害になりますし、もともと雨が多い地域では1,000mm以上降っても被害が出ないことがあります。

地域の雨量は気象庁HPで誰でも見ることができますが、一般の人が調べるのは大変だと思いますので、自治体が出す避難情報に従って身を守りましょう。

また、気象庁が発表している「キキクル」を検索すると、自分が現在いる場所の危険度がすぐわかります。合計の雨量に関しては「何mm降ったか」ではなく「危険度がどのくらい高いか」で判断してください。

雨の強さと降り方(一覧表)

1時間あたりの雨量が
▼10mm以上20mm未満…やや強い雨(地面一面に水たまり)
▼20mm以上30mm未満…強い雨(寝ている人の約半数が気づく)
▼30mm以上50mm未満…激しい雨(バケツをひっくり返したよう)
▼50ミリ以上80mm未満…非常に激しい雨(まるで滝のよう)
▼80mm以上…猛烈な雨(息苦しくなるような圧迫感)


■執筆/植松愛実…身近な食材でできる時短作り置き料理やパーティー料理、簡単に彩りを増やせる料理のコツや、いざという時に備える災害食まで、「食」に関する情報を発信。また、東北や東海、関西にも住んだ経験から、各地の伝統的な食材にも詳しい。野菜ソムリエ、食育インストラクター、気象予報士など保有資格多数。

編集/サンキュ!編集部

※記事の内容は記載当時の情報であり、現在と異なる場合があります。