菓子業界で立体商標の登録がじわり広がってきた。認められると固有の権利として保護される「商標」は文字や図形、記号の登録が一般的で、食品の立体形状の登録は商品開発を制限しかねない。出願企業にとって、特許庁の審査のハードルは高い。だが、模倣品の製造を封じて商品のブランドを国内で定着させ、海外展開の強化にもつなげられるとして、注目し始めた食品メーカーがある。(共同通信=徳光まり)

 ▽単なる野菜?

 明治は7月、チョコレート菓子「たけのこの里」の立体商標の登録に成功した。1979年に発売して以来の看板商品で、文字だけは既に商標登録していたが、立体の審査は難航。特許庁は2019年、タケノコを模した円すい形は野菜の形でしかないとして申請を認めず、「単に商品の一形態を表示するにすぎない」とはねつけていた。

 そこで、明治は姉妹ブランドの「きのこの山」の立体商標が3度の出願の末、18年に認められた際の手法で再挑戦。ロングセラー商品ならではの強みを生かし、「長年の使用で取引先や消費者に自社の商品と明らかに認識されている」との証明に注力した。「チョコレートは四角や丸の流通が多い中、この形状だからこそ長年愛され高く認知されてきた」(担当者)との思いで市場調査を実施。15〜64歳の男女約1200人にあらゆる角度から商品を写した画像を示し、約9割が商品名を当てたことが登録を大きく後押しした。

 ▽「ペコちゃん」も

 特許庁によると、明治のような食品の立体商標は珍しい。チョコレート菓子で登録されても、例えばグミやアイスクリームなど他の菓子を含めた類似品に権利の範囲が及ぶ可能性があり、審査姿勢は慎重だ。

 食品以外も含めると、過去に認められた立体商標には、不二家の「ペコちゃん」や日本ケンタッキー・フライド・チキンの「カーネル・サンダース立像」などがある。

 これらが認められた要因は、商標の基本となる「自他識別力」にある。自社の商品やサービスが他社と明らかに区別される機能が働いていると認定された。「独特な形状で、まねをしようとしても難しい」(特許庁)ため、「たけのこの里」などに比べると審査のハードルは低い。こうした登録済みを含め、立体が商標の対象に加わった1997年以降、特許庁が扱う立体商標の案件は8月末時点で、出願中を含め約2700件に上る。

 ▽海外登録

 商標の利点は半永久的な権利ということだ。一度登録されれば、10年ごとの更新で存続していく。同じ知的財産の保護でも、特許権が原則として出願日から20年で終了するのと比較し、商標は強力な権利だ。

 ただ日本の特許庁で認められた場合、効力は国内にしか及ばない。海外でも類似品の製造を防ぎたい場合、当該の国で立体商標を取得する必要がある。「海外での審査基準も日本同様に厳しく、出願者にとって労力がかかる」(特許庁)といい、メーカーは商品の海外展開に際して留意が必要だ。

 明治は、国内で展開している「きのこの山」を海外の一部で「CHOCOROOMS(チョコルームズ)」として販売中で、既に米国では立体商標を取得済みだ。こうした取り組みが食品業界で知財保護の意識が高まるきっかけとなりそうだ。