東京五輪 南北統一チームの「リアル」 20年の軌跡

東京五輪 南北統一チームの「リアル」 20年の軌跡

 2020年東京五輪で韓国と北朝鮮による合同チームはどう実現されていくのだろうか。昨年9月の南北首脳会談で東京大会への合同出場を目指して双方が取り組むことが確認された。2000年シドニー五輪開会式で五輪史上初めて南北の選手団が統一旗を掲げて同時入場、昨年2月の平昌冬季五輪では開会式の同時入場とアイスホッケー女子の合同チームが結成されて話題を呼んだ。国際オリンピック委員会(IOC)は東京大会でさらにシンボライズされた「南北融和」を期待している。(共同通信=柴田友明) 

 1週間後の2月15日に南北スポーツ界のトップがスイス・ローザンヌのIOC本部で顔を合わせる。IOCは7日、両国とIOCの3者協議を行うと発表した。北朝鮮オリンピック委員会委員長を兼ねる金日国体育相、韓国の都鐘煥文化体育観光相が出席する予定だ。20年東京大会での合同入場行進、合同チーム結成が可能な競技の選定に向けた話し合いがされる。 

 この1年間の南北の五輪担当者とIOC側の動向を振り返ると、これから先の合同、統一チーム構想が見えてくるように思える。 

 平昌五輪での南北融和ムードがまだ記憶に新しい昨年3月末、IOCのバッハ会長は北朝鮮に招かれるかたちで訪朝、金正恩朝鮮労働党委員長、金体育相らと会談している。北朝鮮側は20年東京五輪、22年北京冬季五輪に「必ず参加する」と正式に表明。正恩氏も参加を「全面的に支持する」と述べたと、バッハ氏は平壌からの帰途、経由地の北京で報道陣に語っている。 

 「凍り付いた北南関係が(平昌)五輪を契機に劇的に氷解したのは、IOCの功労だ」(金正恩氏)、「南北の平和と和解の意思を全世界に示し、最大の感動を呼び起こした」(バッハ氏)。直近の平昌五輪について、こんなやりとりがあったとされる。 

 昨年4月の文在寅大統領と金正恩委員長による初の南北首脳会談(板門店)、6月の米朝首脳会談(シンガポール)の前の段階。その後の双方のスタンスは微妙な変化があるようだ。「当時は北朝鮮側が驚くほど熱心だった」「今はむしろ韓国側の方がつんのめるぐらいに積極的だ。北は巧みに韓国側の反応を見ている」。二つの首脳会談を経て、「スポーツ外交」にも自信を深めた北朝鮮。筆者が取材した五輪関係者は口をそろえて今の南北の雰囲気を語る。

 昨年11月には、東京で開かれた各国オリンピック委員会連合(ANOC)総会に金体育相が出席。日本政府は独自制裁の一環として北朝鮮籍保有者の入国を原則認めていないが、「例外的な特別な事情」(菅官房長官)として入国を許可しており、金体育相と五輪関係者の間で東京大会に向けたプランが議論された可能性がある。

 今年1月、国際体操連盟(FIG)の渡辺守成会長が訪朝、その金体育相と話し合いの場を持っている。渡辺氏は国際体操連盟のトップとして過去2年間新たな組織・制度改革に取り組んできた。バッハ会長もその手腕を買っている。渡辺氏は推薦され、昨年10月からIOC委員として活動を始めている。

 体操は夏季五輪では陸上、水泳と並ぶ主要競技。もし東京五輪で南北合同の体操チームが誕生すれば、そのインパクトは大きく、南北融和を示す象徴的な存在になると、だれもが考えるだろう。

 すでに国際ホッケー連盟は先月25日に韓国と北朝鮮の合同チーム「コリア」を結成し、20年東京五輪出場を目指していくと発表。ほかの一部の国際競技団体の動向も注目され始めた。2月14、15日のIOC本部での「南北対話」によっては合同、統一チームの現実味、今後の在り方が見えてくる。日本政府、東京五輪組織委も、もちろんその行方を凝視している。

  ×  ×  ×

 2000年9月、シドニー五輪の開会直前、筆者は現地で2人のIOC委員の会合が終わるのをじっと待つ若手の「張り番」記者だった。報道陣の中には期待感と言ってもいい、ある種の「高揚感」があった。五輪史上初の南北同時行進がそこで話し合われていたからだ。韓国の金雲竜氏と北朝鮮の張雄氏。両国スポーツ界の首脳はIOCのサマランチ会長(当時)と共に姿を現し、しばらくカメラのフラッシュがたかれる中、じっと手を握り合っていた。開会式では「統一旗」での行進、そして最終の聖火ランナーが女子陸上、アボリジニ出身のキャッシー・フリーマンさんだったことが注目された。互いの多様性を尊重し、理解し合おうという大会のムードを象徴する存在だったと思う。あれから20年近く、半島情勢を見守る人々の視線もかなり変化したように感じる。あの高揚感が懐かしい。


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