3年ぶり直接交渉はなぜ失敗したのか ウクライナ戦争、ロシアが譲歩に追い込まれる条件とは
47NEWS6/20(金)9:30

3年ぶり直接交渉はなぜ失敗したのか ウクライナ戦争、ロシアが譲歩に追い込まれる条件とは
ウクライナ戦争和平に向けトルコ・イスタンブールで5、6月に行われたロシア・ウクライナの直接交渉は大きな成果なく終わった。交渉の障害となったのは何か、仲介に意欲を見せた米国とロシアの思惑は、今後の停戦の見通しは―。ロシアの安保問題に詳しい畔蒜泰助・笹川平和財団上席研究員に聞いた。(共同通信=太田清)
▽主導権
―3年ぶりとなるロシアとウクライナの直接交渉実現の背景は。
「両国の仲介に意欲を見せるトランプ米大統領は3月、まずウクライナに30日間の無条件停戦を提案。ウクライナ側は凍結されていた兵器やインテリジェンス情報の供与再開と引き換えにこれに応じた。その後、トランプ大統領はプーチン・ロシア大統領に対しても無条件停戦を受け入れるように説得したが、プーチン氏は電力・エネルギー施設への攻撃の30日間停止を逆提案。これは実施されたが、ロシア、ウクライナ双方が攻撃停止違反を非難し合う中、期限切れに終わった」
「5月になり、ウクライナは英国、フランス、ドイツ、ポーランドなどの欧州諸国を後ろ盾に付け、30日間の無条件停戦をロシアが拒否した場合、米国がより強力な経済制裁を発動するという提案を突き付けた。一方のプーチン氏は既に2月、トランプ大統領との最初の電話会談で、戦争が勃発した『根本となる諸問題』の解決が必要であるという立場を明確にしていた。もとより戦況で優位に立つロシアが現時点で停戦を受け入れることにメリットはない」
「そこで、プーチン大統領は停戦・和平交渉の主導権を取り返そうと、逆に2022年4月以来となるイスタンブールでのウクライナとの直接交渉を逆提案。トランプ氏が受け入れの意思を表明したことで、停戦実施抜きでの直接会談の流れが決まった。ウクライナのゼレンスキー大統領はプーチン大統領との首脳会談を逆提案するなど抵抗を試みたが、プーチン大統領は22年4月にウクライナ側の思惑で中止されたイスタンブールでの停戦・和平交渉の再開を意図しており、ほぼ当時の交渉団をイスタンブールに派遣した」
▽トランプ政権
―ロシアの仲介受け入れの思惑は。
「トランプ米政権はバイデン前政権とは違い、当初からウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を否定するなど、ロシア側に好意的に受け止められていた。ロシアとしては、トランプ政権との一定の関係を維持するとともに、ロシアとの貿易相手国に対する2次関税をはじめとする制裁強化を回避したいとの思惑もあり、米国の仲介に応じることが得策であると判断した」
「曲折を経て決まった直接交渉だが、浮き彫りとなったのはトランプ米政権誕生を受け、ロシアとウクライナ・欧州側の双方がトランプ政権を味方に付けようと画策し争う構図だ」
▽認識甘かったトランプ氏
―だが結果的に双方の捕虜交換以外では、交渉はうまくいかなかった。
「前提として、交渉を仲介する米国と戦争当事国のロシアとの間には、戦争に対する認識の違い、いわば時間軸の違いがあった。米大統領選前に戦争を24時間で終わらせると豪語するなど、早急な解決を目指すトランプ大統領と、戦争を国家存亡の問題ととらえ、長い間の対立でもつれた糸をほどくには時間がかかると考えるロシア側には戦争に対する見方に大きな相違があった」
―トランプ氏の勉強不足だったということか。
「同氏の戦争に対する認識が不十分だったということだろう」
―ウクライナ問題を踏まえ、米ロ関係は今後、どうなるのか。
「ウクライナ問題の早期解決は非常に困難との認識を前提に、プーチン大統領は同問題の解決に向けた取り組みと並行する形で、別トラックで対米関係を中長期的に正常化させることが国益に資すると考えている。トランプ大統領も中東、特にイラン核問題など地政学的な面でロシアと協力する必要があることは認識しており、当面、ロシア側のアプローチを受け入れるだろう」
▽最低限の目標
―交渉ではロシアはウクライナに対し、一方的に併合したウクライナ東部・南部4州と南部クリミア半島のロシア編入承認や、軍事同盟への加盟放棄を求めるなど、厳しい要求を突きつけた。
「双方が和平案を出しお互いの立場を明確にした形だが、ロシアも当初からすべての要求が受け入れられるとは思っていない。それでもこうした要求を出したのは、少なくとも年内は戦場での状況は自国に有利に展開すると予想しており、急いで妥協する必要がないからだ。ウクライナ東部のドネツク・ルハンスクの完全占領を最低限の目標としており、それが実現されるまでは停戦に応じないだろう」
「一方のウクライナ側もロシアの要求を受け入れることは政権崩壊につながることになることから、拒否するのは当然で、当面停戦が実現する可能性は低い」
―ロシアが譲歩する可能性はないのか。
「ロシアが譲歩するとすれば、①劇的に戦況が不利となり、窮地に追い込まれる②経済が劇的に悪化し、国民の支持が失われる③対米関係が劇的に悪化する―などの事態が生じなければならない。逆にこの3点をコントロールできていれば、ロシアは戦争をやめる理由がない。やはり、米トランプ政権の動向が今後の停戦・和平の道筋を作る上で重要な鍵を握っている」
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あびる・たいすけ 1969年生まれ。早稲田大政治経済学部卒業、モスクワ国立国際関係大修士課程修了。東京財団研究員、国際協力銀行モスクワ事務所上席駐在員を経て現職。









