【米大リーグ】エンゼルス−アストロズ(9月21日・日本時間22日 アナハイム/エンゼル・スタジアム)

【動画】大谷翔平、完璧な45号

 不振で顔をしかめていた時がうそのように、エンゼルス大谷翔平投手は、優しく微笑んでいた。8回の第4打席、カウント2-1から内角高めに入ってきた94マイル(約151キロ)の速球を、透き通った衝撃音を響かせて、136メートル先まで飛ばしてみせた。ホームランを確信し、少し歩いて軽くジャンプ、ゆっくりと走り出す“ホームランルーティン”を行うと、地元アナハイムのファンから、この日一番の大歓声を受けた。日本人初のメジャー本塁打王を期待され、現地メディアでもMVP間違いなしと言われる中、復調の兆しとしてはっきり見えたのは、その表情だった。

 大谷の9月の月間打率は、前日までに2割を切っていた。一時は年間60本を超えるペースで量産していたホームランも、9月はわずかに2本止まり。不調の原因は細かい部分であったかもしれないが、明らかに落ちた数字に周囲からも心配の声ばかりが集まっていた。6、7月の絶好調時には気にならなかったストライクゾーンも、結果が出なくなるにつれて、コースぎりぎりの見極めが悪くなった。ボールと確信したものがストライクと判定された影響もあったか、四球OKでぎりぎりを攻めてくる相手バッテリーの術中にはまり、最近ではマドン監督からも打撃フォームの崩れを指摘されていた。

 ただ、この日の大谷は明らかに顔が違った。第1打席で追い込まれながらも変化球に対応できたからか、それとも第3打席で鋭いヒットを打てたからか。いずれにしても、敗色ムードが立ち込めるスタジアム内で、8回の大谷は強打者の雰囲気をまといながら打席に入っていた。

 カウント2-1。打者有利のカウントになった時、かつてバッテリーを組んだアストロズ・マルドナードと何やらひとこと交わした。出塁すれば、相手野手陣と談笑することも多い大谷だが、この場面では実にリラックスした笑顔で、すっと構え、次のボールに備えた。マルドナードの構えは外角高め。ただ、コントロールミスで内角高めに入ってきた。球速94マイル。不調時の大谷であれば詰まってフライやゴロになる、もしくはボールの下を空振りしていたことだろう。もともと低めに強い大谷が、内角高めの速球を完璧にとらえた意味はとても大きい。無駄な力を抜き、素直に反応して振り抜いただけで、打球はおもしろいように飛んでいった。

 ダイヤモンドを1周しベンチに戻った大谷は、チームメイトに声をかけられ、何度かうなずいた。それだけ納得の一打だったのか。44号を放った際は初回ということもあり、まるで表情を変えなかったが、それに比べればはっきりと余裕が持てていた。

 残り11試合。46本のゲレロJr.(ブルージェイズ)、ペレス(ロイヤルズ)との本塁打王争いはさらに激しくなった。力任せに振って打てるほどメジャーは甘くない。高い技術とパワー、そしてメンタルが揃ったからこそ、投打二刀流で大活躍し、45回もオーバーフェンスした。心技体が揃い始めた大谷に、さらなる一発を期待するなという方が、無理な話だ。
(ABEMA『SPORTSチャンネル』)