ドジャース大谷翔平投手が5月14日(日本時間15日)に行われたジャイアンツ戦で4回、無死から右中間席上方の通路に届く特大の12号ソロを放った。あと少しで場外の海へと飛び込む「スプラッシュヒット」かと思われた豪快な飛距離446フィート(約135.9メートル)の一発。これが大谷にとっては今季8本目のソロアーチだった。実は大谷、残りの4本は2ランで全て走者一塁での状況。得点圏に走者を置いてはノーアーチだが、これは「チャンスに弱い」からではない別の理由があった。

【映像】走者なし時は大注目!大谷、特大12号は約136メートル

 ドジャース戦を伝える中継で、解説者が頻繁に口にするものがある。「イニングの先頭打者なので大谷にホームランが出るかもしれません」「ここは一発狙っていいところ」。今季の大谷は、実にこのコメントに沿った打撃が多い。12本塁打のうちソロが8本で、無死が4本、1死が3本、2死が1本。さらに2ランは無死一塁が3本、2死一塁が1本というデータが出ている。ここに試合展開も加味されてはくるが、チャンスではない状況で大谷はリラックスかつ思い切りスイングをして、平均打球速度107.4マイル(172.9キロ)というとてつもないスピードで上空に打ち上げ、フェンスオーバーさせている。

 ではチャンスでどうしているか。一時は1割を切って「チャンスに弱い」と言われていた大谷の得点圏打率も、現在では.239まで上昇。今季の打率.361に比べればまだまだ低いが、それでもかなり上げてきている。その要因となっているのが、チャンスや追い込まれた後に見せる“軽打”だ。もともと非凡な打撃センスを持つ大谷。フルスイングした結果がホームランではなくヒットに、というパターンとは別にヒットを狙ってヒットを打つこともできる。

 特に今季は苦手とされてきた外角低め、ストライクゾーンからボールゾーンの境目である「チェイスゾーン」、さらに外れた「シャドーゾーン」での打撃に、大きな変化が出ている。昨季、外角低めのチェイスゾーンとシャドーゾーンの打率は.272で、空振り率が30.4%。打球速度は87.9マイル(約141.5キロ)だったが、今季の打率は.407、空振り率は20.0%にまで下がり、打球速度は85.8マイル(約138.2キロ)になった。つまり強引なフルスイングではなく、ほどよく脱力してバットをコントロールし、ヒットにする技術がさらに光っていることになる。チャンスで大谷を迎える相手バッテリーが、外角中心の攻めになるのは必然。これを無理に振るのではなく、ミート重視にすることが得点圏に走者を置いての「本塁打ゼロ」の要因になっている。

 昨年に続く本塁打王はシーズン前から期待されていたところだが、高打率をキープして首位打者への期待も急速に膨らんでいる。豪打と軽打、このコンビネーションは相手投手にとって脅威でしかない。
(データ協力:データスタジアム)