渋野日向子に日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)は罰金を課した。理由は前回大会の優勝者ながら病気やケガではなく大会を欠場したからだ。渋野は米国女子ツアー「ホンダLPGAタイランド」に出場するため「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」を欠場。同大会は出場資格が免除される「海外メジャー、もしくはJLPGAが定める主要トーナメント」に該当しないため、100万円の罰金となった。


罰金の是非、そして金額が渋野にとって高いか安いかは置いておいて、確かなのはそこまでしてでも渋野は米ツアーに出たかった、ということだ。もし渋野がサロンパスカップに出場するとなった場合、隔離期間があるため前週の「HSBC女子世界選手権」も出場することができなかった。渋野本人からのコメントは出ていないが、100万円よりも米ツアーの2試合に価値を見いだしたということだろう。

その渋野が昨年からアドバイスをもらっているのが石川遼だ。ウェッジ4本、練習ラウンドのやり方…。様々な部分で石川の助言を取り入れている。なかでも“トップの低い”ヨコ振りスイングは、これまでの2人のスイングからは大きく変わった部分だ。

だが、その石川は2018年の日本ツアー復帰後は基本的にメジャー以外の週は日本で戦っている。13年から17年まで戦った舞台への思いは強く、取材の受け答えでも「もう一度アメリカで活躍するために」という言葉が出てくるが、主戦場はあくまで母国なのだ。

一方で渋野は昨年から長期間の海外転戦を行うなど、シードがないにもかかわらず米ツアーへの比重が非常に大きい。もちろん、渋野は「全英AIG女子オープン」優勝の資格でメジャー大会など何試合かは出られる。そしてコロナ禍ということもあり単純な比較はできないが、石川も例えば米下部ツアーや欧州からのルート、主催者推薦で少ないながらも米ツアーで戦う道だってあったはずだ。それでも日本を中心に戦っているのだ。

ともにスイング改造を行いながらも、できる限り米国での戦いを望む渋野と日本で腕を磨く石川。その差はどこにあるのか。

その差は“経験”と“活躍へのアプローチ”ではないかと考える。5シーズン米ツアーで戦った石川は、自分が米国で戦うために、何が必要かを分かっている。それがロングゲームだ。「ジャパンプレイヤーズチャンピオンシップ by サトウ食品」の初日に「それがよくないと世界でやっていけない」と改めて明言した。逆にいえば元々精度の高いショートゲームはある程度通用できるということだろう。

そこへのアプローチとして「25年やってきたことを変えたので、違和感はまだ残っている」というほどの大幅なスイング改造を昨年から田中剛コーチとともに取り組んでいる。変えた当初は「毎試合スイングが違うんじゃないか」というほど試行錯誤の日々だったが、1年が経過して「練習でできていることをコース、試合でどうやるか」、「意識してやっていることを無意識化する」という状態まででき上がってきた。

この2つが、石川が日本で取り組む理由だと思う。大事なのは実戦であり、練習やトレーニングをやりたいだけできる環境。試合数が稼げないところよりも、いかに試合に出てそこで感じたことをフィードバックして次の試合に生かすか。このサイクルがスイングを固めることに最も適しているのだろう。

一方で渋野はどうか。スイング改造だけを考えれば石川同様日本で取り組むほうがいいのかもしれないが、他にも身に付けるべきことがまだまだたくさんある。例えばアプローチ。これは芝やコースの形状が違う日本よりも本場でやったほうが技術の身につくスピード、内容ともに段違いだろう。そこも課題としている今年は、「ダイキンオーキッドレディス」の朝の練習から4本入れた様々なウェッジで10分以上アプローチを行ったことからも明らかだ。逆に石川は朝の練習でグリーン周りのアプローチをやるのは一本だけ。それも2分程度だ。パターもほとんど転がさない。そのぶん、ショットに時間を割いている。その差は歴然だ。

何よりも、米ツアー参戦歴の短い渋野は、活躍するために「自分が何ができて、何が足りないか」がまだ明確ではないのではないか。それは日本で戦っていても見つからない。米国や海外の様々なコースで、トップレベルの選手たちと回って比較して分かってくる部分だ。もちろん、ゴルフ以外の部分でも、英語、食事、移動…。様々なことをまさに身をもって感じている段階なのだ。

そう考えればともに米国で活躍を目指し、似たようなスイングに改造した2人が別のフィールドで戦っているのも合点がいく。ともに変わらないのは「アメリカで活躍したい」ということ。渋野の罰金のニュースを男子ツアーの会場で聞いて、そんなことを感じた。(文・秋田義和)

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