「全米女子オープン」で日本ツアーメンバーの笹生優花が日本人女子として史上3人目となる海外メジャー優勝を果たした。その笹生とプレーオフで最後まで戦ったのもまた日本勢の畑岡奈紗だった。世界の舞台で日本勢が大いに活躍した戦いを上田桃子、小祝さくららを指導する辻村明志コーチが振り返る。


■海外メジャーのラフからでもバーディを奪える日本人が出てきた

最後まで争った2人に「世界の最高峰で日本人同士のプレーオフ。夢かと思いました。この戦いはどっちが強かったとかではないですね」と辻村氏。特にすごみを感じたのがラフからバーディを獲れたこと。それを示すように笹生のフェアウェイキープ率は59%、畑岡は57%。ともにトップ40にも入っていない。それでもトップのスコアを叩き出したのだ。

「球が見えないくらいのラフでいいショットを打つためには技術と体力どちらかが欠けてもいけません。まずは長い芝でもネックが巻き付かないパワー。これは言わずもがなですが、もうひとつクラブのボールへの入れ方も大事。フェースを返さず大きなカットボールを打つように、 “ラフで芝を切る”ように打たないといけません。この感覚は例えば120ヤード打つとしたら、フェアウェイからだと5番アイアンで20ヤードのカットボールを打つくらいの体力、技術が求められます。少しでもフェースが返れば一気に芝に負けますからね。それがあの2人にはできる。技術もさることながら、日本勢が足りないとされてきた心技体の体の部分を見せてくれました」

もちろん、ショートゲームもうまさが際立った。「2人ともパッティングもうまかった。リズムよく、芯で打てていました。アメリカは日本ほどグリーンがきれいじゃないからこそ芯で打つのがとても重要です」。勝負どころのパットを決められるメンタルは言うまでもない。

■男子チックなゴルフを展開 笹生優花は球を曲げられる

そんな“頂上決戦”を制したのが笹生。辻村氏は昨年の全米女子オープンで見た笹生の練習が今回の優勝にもつながったとみている。

「アイアンのフェースにシールを貼る弾道測定器を使ってクラブの入射角からフェースがスクエアかトーダウンしているかなどの細かいデータをとりながら試行錯誤していました。そのデータを見ながら楽しそうに球を曲げたりしていました。頭の良さを感じるとともに、球を曲げてゴルフができる、女子には少ない男子ゴルファーチックなタイプなんだなと思いました。話題となっているマキロイから取り入れたスイングもそうですが、男子から技術を学んで取り入れられる選手だと思います」

そのマキロイに似たスイングは「トップのポジションやダウンスイングなんかはもはやコピー的ですよね」と辻村氏も感じているが、「マキロイの動画を擦り切れるほど見たんでしょうね」と、スイング以外の別のところからも感じたという。

「パッティングも1つ1つの動作からリズムまでかなり似ていますよね。打った後にグリッププレッシャーを抜いてポンとパターを地面に置くところなんかもそっくりですよね。そのくらい一部始終を見ているということ。そのためには体力が必要だと思い取り組んだ。そういった取り入れ方は非常にいいと思います」

■2人の戦いは今後の日本勢への物差しに 育成のためにもハードセッティングな大会を

この2人の戦いは日本勢にもとてもいい影響があると辻村氏は言う。「日本人の肉体ではメジャーを勝てないといわれてきましたが、もう言い訳できなくなりました。逆に言えば日本ツアーからも行けるということです」。

そのために必要だと感じたのは早期での世界の経験。「できるならジュニアの早い段階からアメリカに行って雰囲気や芝、ほかの国々の選手たちを感じてほしいですね。国際大会で勝つには何が必要か。肌で感じれば、日本に戻ってきてからの取り組みも変わってくる。笹生さん、畑岡さんはそこを見据えてやっているわけですから」。そうすればトレーニングなどに対する考え方も変わってくる。

また、「できることなら」とツアーへの要望も。「海外メジャーのようなタフな試合をもっと増やしてほしいですね。そういう試合を経験することで、みんなが世界で戦う準備ができる」。手前から攻めさせるだけでなく、ピンの上から落とさなければいけないショットが要求されたり、普段使わないようなアプローチを求められたり。そういった試合が増えていけば、さらに世界で戦える選手が増えてくると提言した。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、山村彩恵、松森彩夏、永井花奈、小祝さくら、吉田優利などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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