「ニチレイレディス」は申ジエ(韓国)の優勝で幕を閉じた。今年に入ってからなかなか調子が上がらなかった実力者は、なぜ得意大会で今年初優勝を挙げることができたのか。上田桃子らを指導する辻村明志コーチが分析する。


■狭くて難しい袖ヶ浦 だからこそ集中力が増す
ツアー制度施行後では不動裕理、福嶋晃子らわずかしかいない同一大会4勝目を達成したジエ。これで今大会7戦4勝と袖ヶ浦カンツリークラブ・新袖コースとは相性抜群で「安心できる。家族に近い」と形容する。そう聞くと簡単そうだが、決して簡単なコースではない。フェアウェイは狭くラフも長い。左右両方のドッグレッグがあり、グリーンもジエ曰く「ツアーで一番」小さい。なぜそんなコースが“安心”できるのか。辻村氏はこう見ている。

「好成績を出しておりイメージが良いのはもちろんですが、ジエさんの持っている球のバリエーション、精度があればターゲットが小さい方が全集中できる。逆にフェアウェイが広かったり、外していいエリアが大きければボヤけてしまうことがあるんです。そういった状況に対応できるレベルの高さがあれば、逆に狙いどころは小さいほうがいいということもあります」

辻村氏が「ショートサイドを攻めていかなければいけず、ドッグレッグがあって、林間」の条件に当てはまるコースとして挙げるのは「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」の宮崎カントリークラブ。ここでもジエは2勝していることからも、そういったコースが合っていることが分かる。

もちろん、グリーンを外したときのアプローチの種類、精度も非常に高いことも重要。「プレーオフ3ホール目のヘッドを立てて、コックをほどきながら左ヒジを抜いてスピンを入れたバンカーショットはお見事の一言でした」とショートサイドに外すことが即ボギーにつながらないのもジエがこのコースに強い一因だ。

また、景色に惑わされないショット力にジエの強さを感じたという。「ジエさんはロケーションに対して一番理想の球筋をイメージして、選択するのが非常にうまい。もちろん持ち球の多さもあるのですが、試合、しかも勝負どころでイメージした球筋をトライしていけるメンタルの強さもある。だからどんどん持ち球が増えていくんです。球筋が一辺倒の選手はそれはそれで強さがありますが、やはりロケーション負けしないのは相当な強みです」。逆に言えばそれだけ“嫌なシチュエーション”がないということだ。

これは伸び悩んでいるアマチュアゴルファーにも練習から取り入れてほしい部分。「練習場のマットなり打つばかりではなく、右を狙ったり左を狙ったり、いろいろなターゲットに対して打つようにしてください。もちろん、基本的なドリルなどはマットなりでいいのですが、いかにスクエアのラインがないなかで球筋を作るかが大事。マットの目線に狂わされてはいけません。これができるようになれば、もう一段階レベルアップにつながると思います」。まずは遊び感覚で様々な球にトライしていきたい。

■全美貞の勝負を分けたパットに共通するミス 1コンマの目線
一方、プレーオフ4ホール目に敗れた全美貞(韓国)も、プレーオフ3ホール連続でバーディを奪うなど素晴らしいプレーを見せた。辻村氏が「勝ちゲームでしたよね」というなかで二人の差を分けたのはどこだったのか。辻村氏は2つ挙げた。

1つ目が17番パー3のティショット。この時点で美貞が1打リード。18番はチャンスホールでボギーを打つ可能性は低く、ここをパーで抜ければ一気に優勝が近づく場面だ。ここで美貞は左奥に外し、アプローチを寄せきれずボギーとしてしまう。

「右のピンに対して、右から風が来ていましたからピンを狙っていけばグリーンには乗せられる状況でした。ただ、美貞は安全にいこうとし過ぎて左に外してしまった。攻めていく気持ちがあればパーを拾えたホール。この辺りは勝ち星から遠ざかっていたこともあって、消極的になってしまったのかもしれません」

2つ目がその17番の約2メートルのパーパット、そしてプレーオフ4ホール目の1メートルのバーディパット。ともにスライスラインだった。

「この2パットのときにインパクトよりもコンマ何秒か早くカップを見てしまっていました。その結果、ヘッドは開いて当たり押し出すような形になってしまいました。フックラインであれば目線が上がっても結果的に入ることがありますが、スライスラインではプッシュ気味になり入りません。ほんの一瞬の目線が勝敗を分けました」

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、山村彩恵、松森彩夏、永井花奈、小祝さくら、吉田優利などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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