PGAツアー「テキサス・チルドレンズ・ヒューストン・オープン」の最終日。リーダーボードの上段には初優勝を狙う選手や今季からデビューしたばかりのルーキーたちがひしめき合い、その中で世界ランキング1位のスコッティ・シェフラー(米国)の存在はひときわ目立っていた。


シェフラーは米国、スティーブン・イェーガーはドイツ、アレハンドロ・トスティはアルゼンチン、トーマス・デトリーはベルギー、デビッド・スキンズはイングランド。サンデー・アフタヌーンは国際色豊かな優勝争いとなった。

さらに言えば、その戦いは「アーノルド・パーマー招待」と「ザ・プレーヤーズ選手権」に続く出場3試合連続優勝を狙うマスターズ・チャンプのシェフラーと未勝利選手たちの戦いという構図でもあり、経験と実績からすれば、シェフラーの圧勝が予想されていたことは言うまでもない。

しかし、そんな筋書き通りの展開にはならないところが、ゴルフの面白さだった。

大混戦の最終日の終盤。シェフラーが15番のボギーで一歩後退したことで、首位にはトスティとイェーガーが並び、その2人を5人が1打差から追いかける形になった。

しかし、初優勝のプレッシャーは新人選手たちに重くのしかかっていた様子で、トスティは72ホール目に痛恨の3パットでボギーを喫し、一歩後退。

逆に、一度は後退したシェフラーは世界ナンバー1の意地を見せ、72ホール目の第2打でピンそば1.5メートルのチャンスにつけて、メモリアルパークGCの大観衆を沸かせた。



シェフラーとともに最終組で回っていた首位のイェーガーがバーディパットを決めきれずパーとして、トータル12アンダーでホールアウトした直後。バーディを奪えば、イェーガーとのサドンデス・プレーオフ突入という状況下で挑んだシェフラーのバーディパットはカップ際で止まり、その瞬間、イェーガーの初優勝が決まった。

ドイツで生まれ育ったイェーガーは17歳のときに交換留学生として米国へやってきた。留学先のハイスクールのゴルフ部では、現在はPGAツアー選手となっているハリス・イングリッシュやキース・ミッチェル(ともに米国)がチームメイトだった。

テネシー大学チャタヌーガ校を経て2012年にプロ転向。2018年からPGAツアーで戦い始めたイェーガーは今年でツアー歴7年目を迎え、キャリア通算135試合目で、夢にまで見た初優勝をとうとう達成した。

この勝利でパリ五輪出場の可能性は大いに高まった。優勝賞金163万8000ドル(約2億4780万円)とフェデックスカップ500ポイントも獲得したが、「マスターズ」に初出場できることは「最大のボーナスだ」と歓喜の声を震わせた。

そして、もう1つ。イェーガーが何より喜んでいたのは、尊敬の念を抱いていたシェフラーと決勝2日間を同組で回り、自分が勝利したことだった。

イェーガーは今大会2日目が終わった時点で、シェフラーがいかに素晴らしい選手であるかの持論を米メディアに披露した。

「スコッティのゴルフは見ているだけでもワクワクして楽しい。彼のスイングは決してオーソドックスではないが、そこから打ち出されるショットはすごい。いいとは言えないところを良きものに変えているところが素晴らしい。そして、彼は本当にいい人。彼以上のナイスガイに僕は会ったことがない。でも僕は、そんなスコッティを倒してみせる」



そう豪語したイェーガーは、その言葉通り、シェフラーを見事に抑えて初優勝を達成。「スーパー・ハッピーだ」と笑顔を輝かせた。

シェフラーは、かつての弱点だったパットを昨季終盤とオフの間に徹底練習して向上させ、今春、出場2試合連続優勝を挙げたが、今大会ではパットの不調が目立った。

「(最終18番は)グッドショットでチャンスを作り出したのに(パットで)それを生かせなかったことが、とても残念。今週、素晴らしいプレーを見せたスティーブンはチャンピオンに値する」

惜敗に終わったものの、潔く敗北を認め、勝者をたたえたシェフラーのグッドルーザーぶりは、さすが世界ナンバー1プレーヤーらしい姿勢だった。

文・舩越園子(ゴルフジャーナリスト)


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