<大王海運レディス 最終日◇27日◇エリエールゴルフクラブ松山(愛媛県)◇6540ヤード・パー72>

首位に並び、単独首位にも立った。稲垣那奈子がボギーなしの「64」をたたき出して、試合ではジュニア時代以来という猛チャージ。だが、ルーキー一番乗りとなる初Vには惜しくも届かなかった。1打差のV逸に「きょうのゴルフには大満足です。きのう伸ばせなかったのがいけない。そこが残念」と、足踏みした2日目の「71」を悔やんだ。


4打差を追いかけ、スタートからアクセルを踏んだ。「体を使えずに手打ちになっていた」というショットを2日目のラウンド後に突貫修正。ブレがなくなり切れ味が戻ったアイアンショットでピンを狙い続けた。1番をバーディで滑り出し、4番パー4はでは2打目をピンそば80センチにつけてそこから3連続バーディ。4つ伸ばして折り返すと、2打目をグリーン近くまで運んだ11番パー5のバーディで単独トップにも躍り出た。

終盤、首位の背中を再び追いかける立場になっても、諦めなかった。「そんな怖い顔をしていたんですか。恥ずかしい」と照れたのは、2.5メートルのチャンスを外した15番だった。唇をかみ、口を真一文字に結んだ。視線は正面。ギアをさらに上げたことは傍(はた)から見ても明らかだった。

直後の16番パー3はピン右下80センチにつける気合のティショット。17番パー5も果敢に2オンを狙い、連続バーディでアマチュアの都玲華にプレッシャーをかけた。初日、2日目は合計2バーディ・2ボギーと伸ばせなかったイン9ホールでこの日は3バーディー。「やっとです」とちょっぴり溜飲も下げた。

優勝した都は腰椎の疲労骨折を乗り越えての栄冠だったが、稲垣も中学3年生のときに腰椎分離症と診断されるなど腰痛と戦ってきた。ゴルフ界では珍しい早大出身だが、「大学でケガの予防などについて学びたかった。スポーツ科学部があったのが早稲田を選んだ理由です」。卒論のテーマは「ゴルファーと腰痛の関連性」。ケガとゴルフを科学し、2度目の受験で昨年のプロテストに合格した。

前週はレギュラーツアー2試合目だった「フジサンケイレディス」で初めて予選を通過し29位に入った。初日、2日目は6位と優勝争いも経験。「自信になった」と今大会の結果につなげた。早大出身の女子プロは中島真弓が下部ツアーで2勝しているが、レギュラーツアーの優勝者はいない。目指すはまずそこ。ステップで経験を重ねていけば、その日は必ずやって来る。(文・臼杵孝志)


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