<全米女子オープン 事前情報◇27日◇ランカスターCC(ペンシルベニア州)◇6583ヤード・パー70>

2年ぶり6度目の出場となる鈴木愛が、初めて「全米女子オープン」でプレーしたのは2015年。その時の会場は、今回と同じランカスターCCだった。「思い出がいっぱいつまっています」。そこから9年の歳月は経ったものの、「初めて(の全米女子出場)だったので全ホール覚えていました」というくらいだから、思い入れは相当なものだ。


同じパー70だが、当時の総距離が6406ヤードだったのに対し、今年は6583ヤードと伸びている。それでも雰囲気は変わらず、「すごく好き」と話すアップダウンもあるコースでは、いいイメージも湧いてくる。初挑戦時はトータル4オーバーで32位という結果を残したが、「当時より、ちょっとはうまくなっているだろうなっていう気持ちはある」。その大会後に日本で19勝を積み上げ、賞金女王にも2度輝くなど実績は、当時の自分とは比べものにならない。

9年前のことについては、「観光気分じゃないけど、初めて出て、だただワクワクして楽しくゴルフをしていた」と振り返る。このあいだに重ねてきた実績は、「今は活躍するためにこの場に戻ってきたし、考え過ぎて難しくなるかなとも思います」という“効果”も生み出すかもしれないが、それでもやはり「初めて来た時のようなワクワク感」は変わらず大きい。

過去5回の出場のうち、予選通過したのはこの15年大会と、自己最高の22位になっている19年大会の2回。前回の22年は途中棄権と悔しい思いもしたが、今年はすでに2勝を挙げ出場したこともあり、それも期待の要因になる。

「少しずつバラつきはあるし、パターがあまり入らなかったり、フィーリングがよくない時もある」。決して胸を張って“絶好調”とは言えない状態だというが、それでも2勝目以降、8試合で3回のトップ10入りを果たすなど安定飛行は続いている。「ちょっとショートゲームで頑張れば、それくらい(の順位)になるレベルまでは戻ってきている」。あとは再びピークまで持っていくよう精進を続ける。

すでに米国には先週の金曜日に入り、その翌日昼頃までニューヨークも散策できた。セントラルパークにタイムズスクエア…。しっかりと名所を回ったのだが、「飛行機に乗って体を動かしにニューヨークに来ただけ」と笑う。そして「実は」と“思わぬトラブル”を明かす。

「クレジットカードを家に忘れてきちゃって…。それでお金がなくてどこにも行けないから、ただ見てました(笑)」。出国前に空港内で食事をし、お会計を払おうとしたところでこの事実が発覚。不便を強いられてもいる。どうしても…というモノについては関係者に立替をお願いしてなんとか過ごしているが、「物価も高いし、人に出してもらうと、感覚がずれて、『え?こんなに使ったの?』てなっちゃうので、お店には入ってません」と必要最低限で済ませる毎日だ。

15年大会は真夏の7月開催だったが、今年はそれよりも1カ月以上早い。「暑いのが苦手」という鈴木にとって、これも大きなアドバンテージになる。すでに日曜日に1ラウンドを終え、月曜日はアウトコース9ホールをプレーした。順調に準備は進んでいる。

「お金がないから稼がないと(笑)」。カード自体を無くしたわけではなく、所在もはっきりしているため、精神的ショックは大きくない。このトラブルも味方に。思い入れの強いコースで、昨年の賞金総額1100万ドル(約17億1600万円、優勝賞金200万ドル=3億1200万円)を狙う“モチベーション”になりそうだ。(文・間宮輝憲)


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