<全米オープン 事前情報◇10日◇パインハースト・リゾートNo.2(米ノースカロライナ州)◇7548ヤード・パー70 >

今年の海外メジャー第3戦となる「全米オープン」が現地時間13日(木)に開幕する。今回の会場は、2014年以来となるパインハースト・リゾートで開催される。メジャー大会の中でも最もタフなセッティングといわれる全米オープン。同地で開催された1999年大会で優勝し、かつては日本の「ジュンクラシック」で優勝もしている、悲劇のヒーローともいわれたペイン・スチュワート(米国)について、開幕前におさらいしていく。


■今なお語り継がれる覇者

世界ゴルフ殿堂入りしているペイン・スチュワートが、なぜ悲劇のヒーローと言われているのか。ハンティング帽子にニッカボッカがトレードマークのスチュアート。4歳からゴルフをはじめ、1979年にプロ入り。PGAツアーの出場資格を持っていなかったため、最初はアジアンツアーなどを転戦していた。下積み時代を経て、82年からPGAツアーに参戦。すると89年「全米プロゴルフ選手権」、91年「全米オープン」を制して、メジャー2冠を達成し、一気にスター街道を駆け上がった。

その後は心臓病を患った影響もあり低迷期に入る。98年の本大会では、優勝まであと一歩まで迫ったが、リー・ジャンセン(米国)に逆転負けを喫してしまう。当時の新聞からは、“peinful”(痛み)とペイン・スチュワートの“ペイン”をかけ“peyne-ful finish”と報道された。

悔しい敗戦から一年後、歓喜の瞬間が訪れる。パインハースト初開催となった99年大会、史上まれにみる大混戦のなか、スチュワートがフィル・ミケルソン(米国)に1打リードし最終日の18番ホールに突入する。ミケルソンはパーオンに成功しバーディチャンスにつけた。対してスチュワートは3オンで4.5メートルのパーパットを残してしまう。

これを外せばプレーオフかと思われたパーパットを見事に沈め、91年以来め2度目の栄冠を手に入れた。このパットを決めた際のスチュワートのガッツポーズは今なお語り継がれる名場面として、世界中のゴルフファンの脳裏に刻まれている。クラブハウスまえにはガッツポーズ姿の銅像が作られ、コースの象徴的な存在となっている。

■悲劇のヒーロー

感動的な優勝を果たしたスチュワートだが、彼が伝説となり悲劇のヒーローと呼ばれる要因となった出来事が優勝から4カ月後に起こってしまう。

シーズン最終戦の「ツアー選手権」にプライベートジェットで向かう途中、悲運にも墜落事故により帰らぬ人となってしまう。スチュワートの飛行機事故の知らせを受けツアー選手権は急きょ大会スケジュールを変更。大会日程の短縮をした。

復活優勝を遂げ、最高のシーズンを締めくくろうとしていた矢先の事故。スチュアートは伝説となり、悲劇のヒーローとなった。

事故後、多くの選手、関係者が葬儀に参列した。今もなおスチュワートの死を悼む声は多い。パインハーストでの開催は、スチュワートのガッツポーズを思い起こさせる。


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