「お前が今より稼ぐならオレも家事やる」は勘違い

「お前が今より稼ぐならオレも家事やる」は勘違い

■お前がもっと稼いだら、オレは家事をもっとやってやる、という男たちの間違い
夫婦げんかの定番のお題のひとつに、「家事や育児の分担」があります。多くの場合、女性のほうが家事育児を担当しているようで、マクロミルの情報サイト「ホノテ」によれば、夫婦共にフルタイムの夫婦について、家事育児の分担は平均で70%が女性となっています。といっても、一番多いのは「夫10:妻90」の夫婦だったそうです。

いかにも不公平だ、ということで女性が男性に、「もっと家事もやってよ」と言うわけですが、そうするとブチ切れる男性は少なくありません。

「お前がもっと稼いだら、オレももっと家事をやってやるよ」というわけですが、これがくせ者です。これ、明らかにNGワードなのですが、自分が家事育児をしていない弱みをうすうす理解している男性が、売り言葉に買い言葉で口にしてしまいます。

しかし、この言葉がなぜダメなのか、男性はマジメに考えたことがあるでしょうか。ここでのマネーハックでは、「共働きマネーハック」として、「お前が稼いだら……」発言について考えてみます。

■共働きの男の多くが「年収比」ほど家事も育児もしていないという事実
この種類の発言の基本として、「今の自分は仕事も忙しい中、少しでも家事育児をやっているじゃないか」というイメージがあります。しかし、それはおおむね間違いのようです。共働き夫婦の場合、男性と女性の家事育児分担割合と、男性と女性の年収比はまったく一致していないからです。

先ほどのデータでは平均の分担割合が「夫3:妻7」だったわけですが、「稼ぎ」に見合った分担として家事育児が成立しているとすれば、年収の分担は「夫7:妻3」ということになるはずです。しかし、明治安田生命福祉研究所の調査では、共働きでふたりとも正社員の場合、夫婦の年収差でもっとも多いのは、「夫6:4」だそうです。

簡単にいえば、夫が600万円、妻が400万円稼いでいるということになりますが、実態として家事育児分担が「3:7」だとしたら、すでに不公平状態ということです。

3:7というのは妻の目線からすると、「あなたの2.3倍も私は担当している。正社員として仕事もしているのに」ということになります。もし、男性が家事育児の負担を増やして4:6まで分担できれば、「あなたの1.5倍……」ですから、たった1割、されど1割の家事分担の違いが、夫婦間の不公平感を大きく変えることになります。

■家事と育児を男がやらないから、むしろ女は稼げないのかもしれない
それに「お前が稼いだら→オレは家事を増やす」という順番が非論理的です。というのは、「今よりオレが家事をするから→お前はもっと稼げ」と言うべきだからです。

そもそも女性は定時退社してスーパーに駆け込み、あるいは保育園の時間ギリギリにお迎えをします。夕方の6時過ぎたあたりから仕事のエンジンをかける、とか、6時を過ぎたあたりから、誰と食事をするか相談する(あるいは飲み相手を探す)ようなことは女性には許されません。

子がまだ未就学児の場合、朝も仕事の時間が1時間減らされていることが多いでしょうし、その前も早起きで6時には起きていたりします。これで、これ以上年収を上げる方法があるのでしょうか。特に時短勤務と看護休暇は女性の年収を下げる要因です。

時短勤務をすると、フルタイムで働く人よりその時間分給料が下がるのが一般的です。計算方法は各社それぞれですが、10%以上は下がっています。これはボーナスの計算基礎にも反映することが多いので、文字通り年収を1割下げているわけです。妻の年収が自分より50万円低いのは、ほとんどこれだけで説明できるかもしれず、労働時間の時給で考えれば、年収はほとんど同格かもしれないのです(そして同格ということは家事育児を男が5割やってもおかしくないということ!)。

看護休暇もそうです。子どもが病気になったときなど、有休を利用しなかった場合でも仕事を休むことが認められますが、看護休暇ということになります。この場合、無給になることが多く、その分給料が減ります。月22万円の人がいたら、1日休むたびにざっくり1万円減ってしまうというわけです(月の出社日が22日として)。

これも女性の年収をダウンさせている要因のひとつです。たいていの場合、男は時短勤務もしないし看護休暇も取らないので、その分女性の年収ダウンになっているからです。これらは女性の昇格昇給にもマイナスになることが多く、さらに年収の伸びしろを抑えてしまっています(本当はダラダラ残業している人の業務実績は、時給換算して割り引くべきなのですが)。

実はこれ、専業主婦やパートなら家事育児を男はしなくてもいい、わけでもありません。専業主婦がパートになる、あるいはパートから正社員になるための条件は、今の家事や育児のやりくりについて、夫の分担が約束されていることだからです。家事育児はそのままで仕事の時間だけ増やせ、といわれて女性のやる気が出るわけがありません。

■男が発想を切り替えれば、共働きがぐっと楽になりもっと稼げるようになる
「そもそも家事育児の負担が足りていない」という事実と、「先に家事育児の負担を増やさなければ、妻の年収アップは実現困難」であるという現実は、男性も本当は分かっているはずです。

だとすれば、夫婦げんかのときに、売り言葉に買い言葉で言ってしまった「お前が稼いだら、オレも家事やってやるよ」は、早めに取り下げたほうがいいでしょう。もし妻にもっと稼いでほしいと本気で思うのなら、共働きの男性は今より多く分担するしかないのです(そもそも分担が足りていないし)。

女性は、「お前がもっと稼いだら……」と言われたら、「年収が低いのは家事育児を多く受け持っているからだ」「そもそも共働きで仕事もフルにやっているのに、あなた(夫)の家事育児分担は足りていないのだ」ということをズバズバ反論していきましょう。間違っても「確かに私のほうが年収が低いのだからしょうがない」と、納得して引き下がってはいけません。

日本は20年以上の時間をかけて、男性も女性も働く世の中になりました。男性の家事育児参加割合もじわじわ増えているものの、こちらは女性のがんばりにまだ追いついていないようです。時代の変化に合わせて、アタマもお金の発想も切り替えが大切です。

今の時代、男性は年収を上げることより、家事育児に協力して、共働きで稼いで女性にもっと年収を増やしてもらうほうがいいはずです。男性がひとりきりで1000万円以上稼げと言われるよりラクなはずですから。

山崎 俊輔(マネーガイド)


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