■ウィズコロナで急増?「夫婦間モラハラ」による妻の悲劇
コロナが長引き、夫婦共に家で過ごす時間が増えたことで、普段なら言わないようなことを言ってしまったり、これまでしたことがない態度をとってしまったり……。その結果、家庭内で自覚がないまま「モラルハラスメント」(モラハラ)が生じている家庭も多いようです。

ウィズコロナ期の「夫婦間モラハラ」は、夫婦ともに加害者にも被害者にもなる可能性のある問題です。ここでは、妻が夫から受けやすい3つのモラルハラスメント例をお伝えします。

■事例1:リモートワークのストレスから妻の家事にチクリ
妻が受けるウィズコロナ期の「夫婦間モラハラ」に大きく影響しているのが、夫のリモートワーク。そもそも家庭はお互いに疲れた羽を休め、日々の英気を養うためにあるもの。ところが、リモートワークが続くと、仕事のストレスがそのまま家に持ち込まれてしまい、ほのぼのとした家庭の雰囲気が失われてしまうことがあります。

具体例を挙げてみましょう。夫は仕事のストレスを癒すため、休憩を兼ねてリビングに。ところがソファの上には洗濯物が積みあがったまま……。夫は「これ、いつまで置いとくの?」とため息。家事に追われる妻は「今、手が離せないの」。その言葉にイラッとした夫は「俺は仕事で疲れてんだよ! 専業主婦なんだから、自分の仕事(=家事)をちゃんとやってくれよ」と怒号。

――こんなやりとりが続けば、夫婦の関係が冷え切ってしまうのも無理はありません。

妻にとっては、平日に夫が家にいなければ、言われるはずもない言葉です。一方、仕事モードが続いていた夫も、気持ちの切り替えがうまくできずに、イライラをつい目の前の妻にぶつけてしまったのかもしれません。

■事例2: 家飲みが増えて晩酌時に「うっかり失言」
外で飲めない分「家飲み」が増えると、夫婦で晩酌をする機会も増えることでしょう。ですが、お酒が入るとつい「うっかり失言」も増えてしまうもの。

たとえばこんな例。晩酌中、目の前にいるすっぴんの妻を見ながら、「たまには化粧でもしたら?」と夫。その言葉に「何を今更。家ではずっとすっぴんでしょ」と思いながらも、「そうね」などと言いつつ、受け流す妻。

すると夫は、お酒の力もあってか「いつも化粧しないから、すっごくオバサンに見えるよ」と、にやりと笑いながら言いました。妻はそれ以来、二度と夫の晩酌に付き合いたくなくなりました……。

“夫婦の年数”が増えると共に、“男女の時間”は減っていきます。すると、相手を心地よくさせるほめ言葉も言えなくなり、いつしか思ったことをズバズバと言ってしまえる関係になりやすくなります。でも、容姿のことをストレートに悪く批評されれば、誰だって傷ついてしまいます。

■事例3:「家庭で女はかくあるべし」という決めつけ
コロナの影響で休日にも外出しにくく「おうち時間」が増えている家族も多いと思います。すると、どうしてもお互いのアラが目につきやすくなってしまうもの。

たとえばこんな例。外で思い切り運動もできないので、家の中で筋トレやストレッチする夫。床に寝そべってふと部屋の片隅に目をやると、家具の下はほこりだらけ。部屋のコーナーは黒ずみだらけ……。

夫は「女なのによくこんな汚い家で平気だね」と、馬鹿にしたような顔で指摘。妻は「汚れに気づくのに、性別なんて関係あるのかしら?」と思いながらも、何となく恥ずかしく感じて言葉を飲み込んでしまいました。

外では先進的な考えを持っていても、家庭においては「女はかくあるべし」「男だからこれはしなくてよい」という固定観念にとらわれている人は多いものです。「女性はきれい好きであるはず」「女性なら細かいところに気づくもの」という考え方はその典型でしょう。そうした言葉を深く考えずに口にし、無自覚のうちに妻を傷つけている例は少なくありません。

■「モラハラかも?」と思ったら……「問題の外在化」で感情を整理
今回ご紹介した3つのケースのように、ウィズコロナ期には夫婦が家の中で過ごす時間が長くなるため、普段は気づかないことに気づいてしまい、言わないようなことを指摘して傷つけしまうことがあります。その結果、「家庭内モラルハラスメント」が生じていることが少なくありません。

普段はやさしいと思っていた夫の言動が「モラハラ」化していると感じたら、どうするのがよいでしょうか? ちょっとした言動が気になり怒りを感じたら、できれば感情をそのままぶつけるのではなく、「ウィズコロナという特殊な状況が、余計な一言を生んでいるのかも……」といったん状況を捉え直してみましょう。

これを心理学では「問題の外在化」と呼んでいます。相手の“性格”のせいではなく、“状況”がそうさせているのだと考えるのです。すると、パートナーに対するイライラは軽減し、より建設的な議論をすることができます。

■「第一感情の伝達」で怒りの前の素直な気持ちを伝える
パートナーの発言にイラッとしたときは、怒りの前に湧く感情を見つめてみましょう。これを「第一感情」といいます。怒りは2番目の感情と呼ばれており、その前には必ず「第一感情」が湧いています。「ひどい」「傷ついた」「悲しい」「つらい」「信じられない」……こういった気持ちです。この素直な気持ちをきちんと相手に伝えることです。

「第一感情」を伝えずに怒りに集中してしまうと、相手を責めることに終始してしまい、具体的な改善ができないまま険悪なムードになってしまいます。「ひどい。そう言われると悲しい……」「そんなこと言われるなんて信じられない。すごく傷つくわ」――このように「第一感情」を素直に伝えてみましょう。

すると相手は、自分の言葉がどれだけ相手を傷つけているのかを、理解することができます。すると、「ごめんね」の一言も出やすくなるでしょう。

――ウィズコロナでは、「夫婦間モラハラ」が生じやすいもの。だからこそ、夫婦のコミュニケーションを見直していくチャンスにもなります。怒りの感情を”憎しみ”や”恨み”に発展させないようにするためにも、「問題の外在化」と「第一感情の伝達」を意識的に行い、ストレスのない夫婦関係を目指してみてください。

▼大美賀 直子プロフィール公認心理師、精神保健福祉士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタントの資格を持つメンタルケア・コンサルタント。ストレスマネジメントやメンタルケアに関する著書・監修多数。カウンセラー、コラムニスト、セミナー講師として活動しながら、現代人を悩ませるストレスに関する基礎知識と対処法について幅広く情報発信を行っている。

大美賀 直子(公認心理師)