おひとりさまが認知症になったら…頼れる公的制度2つ

おひとりさまが認知症になったら…頼れる公的制度2つ

■認知症への備えも「おひとりさま老後」には欠かせない
2014年時点の推計(厚生労働省)によると、65歳以上の高齢者のうち、認知症を発症している人は462万人、認知症を発症する可能性のある軽度認知障害の人は400万人だそうです。

実に、65歳以上の4人に1人が認知症とその予備軍ということ。2025年には、高齢者の約5人に1人は認知症になると予測されています。

認知症は長寿の宿命のようなもので、他人事ではなく「自分事」として備えないといけないということですね。特に、認知症を発症しても、そのことに気づいてくれる同居家族のいないおひとりさまは、判断能力が正常なうちに、手を打っておきたいもの。そんなときに使える制度・サービスを紹介します。

■ある程度、判断能力があるうちなら「日常生活自立支援事業」
ある程度、判断能力がある段階で利用できるのが「日常生活自立支援事業」。全国の市町村にネットワークのある社会福祉協議会が提供しているサービスです。

「福祉サービスを受けたいが、どうしたらいいかわからない」「介護保険関係の書類の書き方がわからない」「使いすぎたり、通帳類の保管場所を忘れてしまうなどのお金の管理に困っている」といった人が利用できます。

利用の流れは次の通りです。

1. 最寄りの社会福祉協議会に連絡
2. 相談・打ち合わせ
3. 支援契約書の作成
4. 契約
5. サービス開始

相談や支援計画の作成にかかる費用は無料ですが、福祉サービス利用手続き、金銭管理などのサービスは有料です。料金は実施主体で異なりますが、訪問1回あたり平均1200円とのこと(厚生労働省のホームページより)。

本人に、社会福祉協議会と契約できる判断能力がなくなったら、本人にふさわしい援助につないでくれたり、「成年後見制度」の利用を支援してくれたりもします。

■判断能力が低下している人を守る「成年後見制度」
判断能力が正常、やや怪しい、かなり低下まで使えるのが「成年後見制度」です。この制度はさらに「任意後見制度」と「法定後見制度」に分けられます。

●任意後見制度
本人に十分な判断能力があるうちに利用できるのが、この制度。将来、判断能力が不十分な状態になったときに備えて、あらかじめ本人が選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活や療養看護、財産管理に関する事務について代理権を与えるというものです。

本人の判断能力が低下したら、任意後見人は、契約(任意後見契約)で決めた事務について、家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督のもとに行います。これによって、本人の意思に沿った保護・支援をすることができるというわけです。

任意後見制度を利用するには、原則として、公証役場で契約を結ぶ必要があるので、手続きの詳細は最寄りの公証役場に問い合わせてください。かかる費用は次のとおりです。

・公正証書作成の基本手数料 1万1000円
・当期嘱託手数料 1400円
・登記所に納付する印紙代 2600円
・その他(本人たちに交付する正本などの証書代、登記嘱託書郵送の切手代など)

●法定後見制度
判断能力が不十分な状態から、著しく不十分、常にかけている状態に利用できるのがこの制度。「後見」「保佐」「補助」の3つがあり、本人の判断能力の程度に応じて選べます。

家庭裁判所に選ばれた成年後見人・保佐人・補助人は、本人の利益を考えながら契約などの法律行為をしたり、本人が法律行為をするときに同意を与えたり、本人の同意を得ない法律行為を取り消したりします。それにより、本人を保護・支援します。

法定後見制度を利用するには、本人の住所地の家庭裁判所に後見開始の審判などの申し立てをする必要があります。申し立ては、本人、配偶者、4親等内の親族などが行いますが、身寄りがいなくなってしまったおひとりさまは、市町村長が申し立てを行ってくれます。

申し立てから法定後見の開始までは、3〜4カ月かかります。また、かかる費用は次のとおりです。いずれも別途、連絡用の郵便切手、医師による鑑定料(後見と保佐に必要。10万円程度)がかかります。

・後見 申立手数料(収入印紙)800円+登記手数料(収入印紙)2600円
・保佐 申立手数料(収入印紙)800円×申立件数+登記手数料(収入印紙)2600円
・補助 申立手数料(収入印紙)800円×申立件数+登記手数料(収入印紙)2600円

どちらの制度を利用するにしても、お金がかかります。やはり、老後資金は余裕を持って準備したいものですね。

■認知症になる前に制度やサービスの契約を
なお、認知症が進むと、自分が認知症であることを認める判断能力が衰え、制度・サービスの契約をしていても覚えていない可能性があります。ですから、親族や友人に知らせておき、対処してもらうようにしましょう。

そのために、親族(いるなら)や友人との付き合い・つながりは、絶やさないようにしたいものです。また、早めにケア付きマンションや有料老人ホームなどの施設に住み替えておくのもいいでしょう。

小川 千尋(マネーガイド)


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