花を飾るのは好きだけど、いざやってみると意外なポイントでつまずくもの。水替えの方法、花瓶とのバランス、ブーケの扱い方などの悩みについて、花屋『ル・ベスべ』オーナーの松岡龍守さんに相談。解決方法を教えてもらいました。

今にもしおれそうだから、
どうにかして元気にしてあげたいです。

原因は多くの場合、花まで水が上がっていないから。まず試してほしいのは水切りです。ボウルに水を張って花を挿し、水中で茎をカットする基本中の基本ですが、忘れちゃいけないのは、水が上がるまでしばらくそのままにすること。シャキッとしたら、新しい水を入れた花瓶に挿して涼しいところに置く。それでも戻らないときは、元気な花の頭だけ摘んで水に浮かべるなど、短く仕立てて楽しみましょう。

大きい花瓶に大胆に飾りたいけれど、
重くて水を替えるのが大変です。

そんなときは延命剤に頼りましょう。入れておけば水が汚れにくいし、糖分入りなら花の栄養にもなります。すると夏でも3、4日くらいは水替えしなくても持ちます。あとはちょっとした裏技も。最初に少しだけ水を入れ、花が吸い上げてかさが減ったら水を足すんです。少しだけ残った水に綺麗な水を足せば、それなりに汚れは薄まる。枝物など丈夫な品種は、これで十分ですよ。

飾ってしばらく経つけれど、
いまだに切り花のつぼみが開きません。

ひとつの茎に3つつぼみがついているとして1つ開いたとしましょう。しかし開いた花を維持するのにはパワーが必要で、2つ目、3つ目のつぼみが開かないことがあるんです。なので1つ目が咲いて楽しんだら剪定を。すると2つ目が開く可能性が高まり、3つ目も同様です。また、購入時につぼみが柔らかいものを選ぶと比較的開きやすいです。とはいえ判別は難しいので、お店の方に尋ねてみてください。

一輪だと見た目がさびしくなって、
バランスよく飾れません。

一輪でも雰囲気を出すなら、その草花が育っている姿に近づけてあげるのがポイント。例えば葉をあえて取らずに挿してみたり、一本に花とつぼみがついた花を買うのも手です。ラナンキュラスやマーガレットなど、いわゆる〝草花〞だと飾りやすい。それでも花瓶とのバランスが悪い場合は、「3対1」の長さを意識してみてください。花は3、花瓶1の長さ、あるいは逆のバランスに。見栄えがする黄金比です。

犬や猫と一緒に暮らしているけれど、
花を飾っていいかわかりません。

大切な動物のことだから、まずは獣医さんへ相談してもらうことを前提に、花屋としての経験を伝えます。ユリやチューリップなどのユリ科の花は犬猫が触れると危険。特に球根を口にしてしまうと大変なので、水耕栽培は避けましょう。でも多くの犬と猫は経験しながら「この花は危ない」と理解してくれるようです。特に気にかけてほしいのは好奇心旺盛な子犬・子猫期で、以降は飾っても問題ないでしょう。

お気に入りのアンティークの花瓶、
底から水が染み出てしまいました。

単純ですが、水が漏れた花瓶の中に小さい容器を入れて使ってみてはいかがでしょう? つまり水漏れする瓶をカバーとして使うんです。鉢植えではカバーを付けるのは一般的ですよね。大きな花瓶を使いたいときにも役立つ方法で、たくさんの花を挿すのも水替えをするのも大変ですから、中に小さな花瓶を収めると楽なんです。実は、店頭のディスプレイなどではよく使っている方法なんですよ。

ショップに並ぶ花瓶の種類が多すぎて、
まず何を買えばいいか悩ましいです。

ポイントは2つ。ひとつは口が広すぎないこと。花をたくさん挿さないと格好がつきません。だからシンプルに見えて案外、筒状のシリンダー型は難しい。シンプルなものをひとつ手に入れるなら、口がすぼまっていて、色はクリアのベースを。もうひとつは置き場を意識すること。例えば食卓に飾るなら、一緒に並ぶ食器や料理も想像して花瓶を考える。もっとも、手近のビンやコップに挿してもいいんです。

ブーケをプレゼントしたいけれど、
どうしても渡す当日に受け取れません。

まずはそのことを花屋に伝えましょう。持ちのいい花を選んだり、保水を多めにしたり、ブーケを作るにあたって店側でできることがたくさんあるんです。とはいえ受け取ってから翌日まで放置するのは心配ですね。どうしてもの場合は、大胆ですが紙の包みを外して、保水しているビニールの包みの底に鉛筆サイズの穴を開けて、水に挿すこと。その上で涼しくて薄暗いところに置いて保管しましょう。

手入れは面倒でも 無理なく続けるのが大切。

「花を飾るのは面倒ですよね、生き物だもの。でも花は文句を言わないからいいじゃない(笑)」と、チャーミングに語るのは『ル・ベスべ』オーナーの松岡龍守さん。

「水は花にとっての栄養タンク。これを清潔に保つのが手入れの基本です。延命剤を使うのも手だし、花瓶にキッチン用漂白剤を少し入れてもいい」と、根を詰めすぎずに気楽に管理するのが松岡さん流。

「花の水揚げに大切なことなのに、意外と忘れがちなのがハサミの手入れ。しまう前に水と汚れをさっと拭き取れば長持ちします。鉄ハサミなら研げますが、ステンレス製は刃こぼれしたら買い替えを」

 疲れた日は、松岡さんでも何もできないこともあるという。しかしブーケをもらった日は少し頑張ってほしいとのこと。

「お祝いなどの会で帰宅が遅くなって、体はクタクタかもしれませんが、家に帰ったら根元だけ切って水に挿しましょう。置いたままだと翌朝にはしおれていることも」

松岡龍守 

Tatsumori Matsuoka

『ル・ベスべ』オーナー

1997年に故高橋郁代さんと『ル・ベスベ』をオープン。本誌連載「&days」で「今月の花」のアレンジメントも担当。
東京都港区南青山7‒9‒3 03‒5469‒5438 11時〜17時 月火休

levesuve.com

illustration : Hiroko Shono text : Ryota Mukai

&Premium No. 126 Life with Flowers & Greens / 窓辺に、花と緑を。

人はなぜ、こんなにも花や草木を愛するのでしょうか。植物と触れ合うことは、その美しさを愛でるということにとどまらない大きな喜びを、私たちに与えてくれます。植物とともにある生活は、毎日が発見の連続。 季節の移ろいに敏感になるだけでなく、住まいや暮らしそのものを、心地よく、健やかにしたいと願う気持ちまでもが、ふつふつと湧いてくるように思います。さらに、私たちの中に潜む原初的な感覚の扉をそっと開き、心にやすらぎをもたらしてくれるのです。今号は、花を飾ること、植物を育てることを楽しみながら、心地よく暮らす人たちを訪ねました。

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