杏仁豆腐は店によって口当たりや味わいが大きく異なるスイーツ。つるりとした食感のものもあれば、もちっとした食感のものもあり、自分好みの杏仁豆腐を探す楽しみがある。本連載の第5回でも取り上げたが、今回は迪化街で約40年の歴史をもつ『顏記杏仁露』と、晴光市場近くの路地にある『杏福冰館』を紹介したい。前者は寒天ゼリーに似た「杏仁露」の専門店。店主によれば、「百年前からこの一帯で天秤棒を担いで売っていた職人から受け継いだ味」とのこと。後者はMRT南京復興駅近くにある人気デザート店『春美冰果室(ツンメイピンクオスー)』と親戚関係にあり、そこで学んだ弾力性のある杏仁豆腐を供している。どちらも手間ひまをかけた手作りの逸品。杏仁豆腐の多様な味わいを探ってみたい。

昔ながらの味を今に伝える「杏仁露」の名店。

 顏浩祺さんと陳彩霞さんの夫妻が経営する店。30年ほど前に屋台から店舗に変わったが、店先には今でもお碗を積み重ねた台車があり、注文はこちらで行う。話を聞くと、杏仁露づくりは相当な作業量を要することがわかる。まずは水を1時間沸騰させた後、杏仁粉と寒天の塊を2時間ほど煮込み、その後は10時間以上置き、固まったら冷蔵庫で冷やすという流れ。素材を配合する比率と火加減が決め手となる。ここでは長年の経験によってぷるんとした食感を作り上げている。蔗糖で作った自家製シロップと氷を加えているが、緑豆や小豆、練乳をトッピングすることも可能。「いつまで続けられるかわかりませんよ」と笑う店主だが、懐かしい味を求めて訪れる常連が後を絶たない。

顏記杏仁露
イエンチーシンレンルー

台北市大同區迪化街一段21號 0916−838−987 9:30〜17:00 月休 杏仁露は50元。小豆入りまたは緑豆入りは60元。

真綿のような極上の柔らかさと舌触り。

  かき氷やお汁粉など、様々なスイーツを扱う店だが、なかでも高い人気を誇るのが杏仁豆腐。ここでは原料の杏仁(きょうにん)をすり潰すところから始め、タピオカの原料である樹薯粉(キャッサバの粉)を加え、約40分間、間断なくかき混ぜ続けている。こうして出来上がった杏仁豆腐は想像以上に弾力性があり、レンゲで掬い上げるだけでもプルプル食感なのがわかる。一口食べてみれば、もちっとしながらも溶けていくような食感に虜になるはず。しかも濃厚な杏仁スープに入っているのも嬉しい。そのままでも十分なおいしさだが、ホクホクとした食感の小豆か、煮込んだピーナッツをトッピングするのもおすすめ。サイズが大きめの杏仁豆腐なので、口いっぱいに頬張る幸せを噛みしめたい。

杏福冰館
シンフーピングワン

台北市中山區雙城街10巷35號 02−2586−8663 12:00〜21:00 日休 杏仁豆腐75元、小豆+10元、ピーナッツ+10元。

文/片倉真理 
※この記事は、No. 127 2024年7月号「&Taipei」に掲載されたものです。


台北在住ライター・コーディネーター 片倉真理

1999年から台北に暮らす。台湾に関する書籍の執筆、製作のほか、雑誌のコーディネートなども手がける。台湾各地を隈なく歩き、料理やスイーツから文化、風俗、歴史まで幅広く取材。著書に『台湾探見』、共著に『台湾旅人地図帳』(共にウェッジ)、『食べる指差し会話帳』(情報センター出版局)など。