乙女になりたい。お花やレースやリボンにうっとりしたい。たとえキッチンの花瓶が長らく空っぽであろうとも、殺伐としたデスクが目の前に待ち構えていようとも、乙女心を満たしてくれるのは、ガートルード・スタインのポエムのみならず、文房具屋のラッピング用品売り場の片隅にひっそりと咲くペーパーフラワーである。
 ところでいったいこの針金製の極小の花は何と言う名で、何の用途のものなのか? チョコレートやお菓子の袋の口を結んだりするものであろうか? そもそもなぜ文房具屋に並んでいるのか? 果たしてGoogle検索したところで何とも判然としない代物ではあるが、薔薇を何本もあわせて超ミニサイズの花束を作るも良し、手紙と一緒に封筒に入れるも良し、プレゼントに結ぶも良し、と私は大層愛用している。しかしながら文房具としての実用度はペンや鉛筆どころかコンパスや分度器に比べてさえ遥かに低いのであるが、でもだからこそなおいっそう愛おしい。
 乙女とは、無為にも等しい贅沢を愛でることができる心持ち

左/ベトナムの古びた文房具屋の片隅で発見した薔薇の花。中/エストニアの古都・タリンの文房具屋で売られていたのは金属製のシールタイプ。右/渋谷PARCOの〈POV STORE Bangkokシテン〉にて入手したタイの花。

edit : Kisae Nomura
※この記事は、No.7 2014年5月号「&STATIONERY」に掲載されたものです。

&STATIONERY


作家・マンガ家 小林 エリカ

シャーロック・ホームズ翻訳家の父と練馬区ヴィクトリア町育ちの四姉妹を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)発売中。2021年夏、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)刊行予定。