ノートブックというからにはこれは本の一種に違いない。
 しかし、告白すると私は、本は文句なしに好きだが、ノートブックという存在の重さには時折耐えられなくなる。だってそれは本のようにただ捲って読めばいいってものではなく、書き入れるもの。にもかかわらず、本のごとく糸かホチキスで綴じられているものだから、一枚破くとばらばらと反対側の紙まで破れてしまうし、自由がきくスケッチブックとは異なる緊張感満載である。つまり、同じ熊でもこれはパンダとヒグマほどの違いがある。いやが応にも使い手の真価は問われ、最初の一頁に向き合う際のプレッシャーは計り知れない。絶対に失敗できない!
 しかし、その壁を乗り越えるという成長を遂げ、気を緩ませること無く最後の一頁まで到達することに成功したならばその喜びは計り知れない。なにしろ、それは世界でただ一冊だけの「私の本」になるのだから。書棚に並べつつ輝かしき完成図を妄想し、真新しい頁を開いてみる。
思わず右手が震える四月の日(字足らず)。

左上/プレゼントされたフォーチュンテリングバースデーブック。アメリカの1930年代の復刻品。右/オランダ・アムステルダム、アンネ・フランクハウスで購入の日記帳。柄はアンネの日記帳のモチーフから。左下/NYはグッゲンハイム美術館、河原温の「サイレンス」で入手。

edit : Kisae Nomura
※この記事は、No.19 2015年 5月号「&STATIONERY」に掲載されたものです。

&STATIONERY


作家・マンガ家 小林 エリカ

シャーロック・ホームズ翻訳家の父と練馬区ヴィクトリア町育ちの四姉妹を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)発売中。2021年夏、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)が発売。