谷口ジローの『歩く人』。この作品を機に彼の展覧会に足を運んだり、ほかの作品も手に取ってみたり(人にプレゼントしたことも)しました。
最近足を運んだ「マティス展」(東京都美術館)と「部屋のみる夢」展(ポーラ美術館)で心奪われて思わず購入したポストカード。言葉はなくとも、美しいものに触れるだけで、日々の生き方も豊かになります。

何気なく出合ったものに、支えられる日々。

振り返れば、何気なく出合った本や映画、アート……が自分の生き方に影響を与えてくれていた。そんな経験は誰しもがあるのではないでしょうか。人生を大胆に変えてくれた、とまでは言わずとも、緩やかに。

私にとっては、谷口ジローの漫画『歩く人』がそのひとつかもしれません。作中にセリフは少なく、ただただ主人公の男性が街を歩く様子が精緻なイラストで描かれている。特に大きな出来事は起きないのに、なぜかひとつひとつの描写に心が動かされるのです。木漏れ日って、通り雨ってこんなに美しいのか、と。この作品に出合ってから、ふだん自分が散歩をするときの視点が変わったように思います。

今回の特集「あの人は、どう生きてきたのか」では、生き方に影響を与えてくれた本と映画を俳優・片桐はいりさん、TVプロデューサー・佐久間宣行さんなど各界で活躍される5人に聞きました。そのほかにも、自分なりの働き方を見つけた5人の女性へのインタビュー企画など、盛りだくさんの1冊です。何を大切にして生きていきたいかを考えるための、たくさんのヒントが詰まっているはずです。

 
(本誌編集部/H)

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