東京五輪金メダル候補が語る「パートナーに掛けられた忘れられない言葉」

 バドミントン女子ダブルスの福島由紀、廣田彩花ペア(丸杉Bluvic)が「THE ANSWER」のインタビューに応じ、「パートナーに掛けられた忘れられない言葉」について語った。世界ランク1位で東京五輪金メダル候補とされるフクヒロ。一時的に解散した経験のある最強ペアには、互いに寄り添い合う関係性があった。2人が相手に掛けられた言葉から「パートナー論」を探る。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

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「パートナー」。共同で何かをする相手のほか、時には交際相手や配偶者のことをこう呼ぶ。家族よりも長く、密接な関係になる人もいるだろう。そんな大切な存在に何を思い、どう接するのか。金メダルを狙う2人にも意識していることがある。

 27歳の福島と26歳の廣田。1学年違いの2人は高校卒業後、同じ実業団に入ったことでペアを結成した。「パートナーに掛けられた言葉で嬉しかったこと、支えになったものはありますか」。それぞれに同じ質問を投げかけると、2人は同じ時期を思い浮かべた。

 リオ五輪出場を逃し、2016年4月にペアを解消。息が合わず、スタッフに勧められて別々の道を歩むことになった。「自分の意見をずっと言うばかり」とコミュニケーションが不足しがちだった福島と、「自分が悪いから」と気持ちを表現しなかった廣田。あべこべな関係だった。

 約3か月間の一時的な解散が転機となった。空白期間を経た後、2人の間で交わされたやり取りが今の強さに繋がっている。

 廣田が忘れられないのは「廣田はもっと自信を持っていいんだよ」という言葉だ。共同生活をする遠征中。同じ部屋で寝泊りする中、弱気になった姿を見かねた先輩に掛けられた。もともと引っ込み思案の廣田はこう振り返る。

「自分は不器用なので、なかなか自分に自信が持てなかったです。ネガティブになったり、自信が持てなくなったりした時に言われました。『廣田にしかできないことがあるし、ここは凄く廣田の強みだから』って。嬉しかったのを覚えていますね」

 後衛の先輩を信頼し、がむしゃらに前に突っ込んで攻めるスタイルは大きな武器。だが、気持ちで引いてしまっていては発揮できない。「誰にも真似できないところもある。自分の長所だな」。パートナーの言葉に背中を押され、長所を自覚すると、さらに強くなれた。

 当時の心境を語る隣で、福島も「覚えています」と同じ場面を思い返した。この言葉を掛けた理由は「試合で負けて消極的になっていたから」と明かす。

「廣田に対して『自分の対戦相手だったら凄くやりづらい』と思うので、相手はもっと嫌だろうなと思います。これは凄い長所。廣田は謙遜しすぎているし、もっと自信満々でやった方がいいなって。『遠慮してるんじゃないの?』『どんどん自分を出していっていいんじゃない?』と声を掛けました」

福島が若手に送るアドバイス「ダブルスは1人でやるものではない」【写真:Getty Images】

福島が挙げた忘れられない言葉「先輩じゃないとダメ」

 廣田はあまり感情を表に出さないポーカーフェイス。福島は表情から気持ちを想像するのが「なかなか難しい」と笑いつつ、「雰囲気でなんとなくわかります」と長年一緒にいることで察しているという。

 一方、福島が挙げた言葉は「福島先輩じゃないとダメ」だ。なんとも愛を感じるフレーズが生まれたのもペア再結成後。意見を言うようになった後輩に言われた。「ふとした言葉だったかもしれないです」。これも遠征中に2人部屋に泊まっていた時だった。

「廣田は口下手なので、こういうことをあまり言わないですね。正直びっくりしたというか、『あっ、そういうふうに思ってくれていたんだ』という嬉しさはありました。言われた自分は『あっ、おっ、おっ……』みたいな感じでオドオドして(笑)。自分も廣田じゃないと無理だと思っていたので、言葉にしてくれたことが嬉しかったですね」

“告白”について、廣田は「いや、覚えてない(笑)」とポツリ。「覚えてないというか、いつも思っていることではありますね」と率直な胸の内を明かした。相手の意見を「聞いてみよう」という意識を持ち始めた福島と、「自分はこうしたい」と伝えるようになった廣田。今でも2人だけで話す時間を大切にしているという。

 最強ペアに挙げてもらったパートナーからの忘れられない言葉。共通するのは“相手に自信を持たせる”という部分だ。信頼があるからこそ、率直に想いをさらけ出せる。さらけ出したからこそ、信頼が厚くなる。時間、空間を共有し、フクヒロは結びつきを強くしていった。

 目標を問われると、ともに「東京五輪で金メダル」と迷いなく答える。互いに尊重し、共通目標を大切にしているからこそ、一つになれるのだろう。ダブルスを組む若い選手へ、ペアを代表し、福島からパートナーに対する声掛けのアドバイスをもらった。

「ダブルスは1人でやるものではない。2人が一つになった結果強くなる、力を発揮できるものだと思っています。パートナーがミスをしたら、ムカついたり、自分も落ち込んだりするけど、片方だけがずっとミスをしているわけではない。そういう時、どう声掛けをしたらパートナーがどう復活するのか、気持ちが上がるのか。『フン!』ってするのではなく、寄り添ってあげることが大切です。互いに寄り添うような関係性になれれば絶対に強い。そこは2人で心掛けてほしいなと思います」

 フクヒロが世界一に君臨する理由がここにある。

(取材は2月末)(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)