都内で引退会見

 フィギュアスケートの宇野昌磨(トヨタ自動車)が14日、都内で競技者としての引退会見を行った。男子シングルで平昌五輪銀、北京五輪銅と2大会連続メダルを獲得。世界選手権も連覇するなど、長らく日本男子を牽引してきた26歳が、21年間の競技生活に別れを告げ、プロ転向を表明した。

 会見には報道陣約120人、テレビカメラ約20台が集結。開始1時間以上前から宇野の言葉を聞くため列を作っていた。拍手を受けながら黒のスーツ姿で登場。「よろしくお願いします」と笑顔で挨拶し、トヨタイムズスポーツキャスターの森田京之介氏とトークセッション形式で心境を述べた。

 これまでの競技生活について「まさかこういう選手になれると思わなかったし、人前で喋れる人間になれると思っていなかった」と感慨。「スケートと出会えて、感謝とともに驚きばかり。五輪の舞台でいい成績を残せると思いませんでしたし、世界選手権で優勝する選手になれると3〜4年前まで思っていなかった。フィギュアスケートとの出会いは感慨深いものだなと思います」と振り返り、こう続けた。

「僕は周りの方々に恵まれたなと思っています。僕自身、自発的に何かをやることはない。インドアですし、努力家と言っていただけるのは嬉しいけれど、周りの方々がのびのびとやれるようにサポートしてくださった。全力が出せた結果が素晴らしい結果につながった。課題を探して発言していたけれど、後ろを振り返ると凄い道を歩いてきたと実感する」

 過去のインタビュー映像を見て、「凄く意識高いなと思いますね(笑)。今となっては。引退して、まだ間もないんですけど、彼はよくやったなと僕は思います」と笑顔。最後の1年には「1年間通して試合に出て、競技者として熱い思いを感じさせてくれた後輩たちに感謝している。これだけ全力を注げる場所が存在することにすごくよかったと思う。1年通して全力で取り組んだ末の演技。成功、失敗もたくさんあったけれど、僕にとっては失敗も成功も宝物のような時間になった」とした。

 今後については「プロとしてですけれどもスケートという道を続けていくことに変わりはないです」とプロ転向を見据えた。

 宇野は昨年12月の全日本選手権で6度目の優勝。「競技人生に悔いを残したくない」と強い思いも口にしていた。テーマの一つに表現力を掲げる一方、イリア・マリニンら4回転ジャンプを武器にする猛者の存在から「競技者として戦いたいと思った以上、必要」とジャンプの重要性とも向き合った。

 3連覇を目指した今年3月の世界選手権ではショートプログラム(SP)1位ながら、フリーで転倒もあり総合4位。今月9日には自身のインスタグラムで「この度、現役選手を引退する決断を致しました」「素晴らしい競技生活を送れたことにとても感謝しております」などと報告していた。この夏以降は複数のアイスショー出演が予定されている。

■宇野昌磨(うの・しょうま)

 1997年12月17日、愛知・名古屋出身の26歳。5歳からスケートを始め、2015年世界ジュニア選手権で金メダルを獲得するなど頭角を現した。16年には全日本選手権で初優勝を果たし、羽生結弦らと日本フィギュア界を長年牽引。五輪では18年平昌で銀、22年北京で銅メダルを獲得。22年、23年には世界選手権を連覇した。日本選手権は4連覇を含む歴代2位タイの優勝6度。五輪以外の主要国際大会を全制覇する「生涯グランドスラム」も達成している。4回転フリップの世界初成功者。

(THE ANSWER編集部)