敗戦でも光った日本ハンドボール界の若き才能 徹底マーク翻弄、藤坂尚輝12得点でプロの意地【リーグH】

THE ANSWER6/15(日)11:05

敗戦でも光った日本ハンドボール界の若き才能 徹底マーク翻弄、藤坂尚輝12得点でプロの意地【リーグH】

PO準決勝に出場した大同フェニックス東海の藤坂尚輝【写真:中戸川知世】

リーグHプレーオフ準決勝

 ハンドボール大同フェニックス東海のエース藤坂尚輝(22)が、異次元のプレーでスタンドを沸かせた。リーグHのプレーオフ(PO)準決勝が14日、東京・代々木第一体育館で行われ、男子レギュラーシーズン(RS)5位の大同は同1位のブレイヴキングス刈谷と対戦。31-40で敗れたものの、藤坂は変幻自在のシュートで相手ディフェンスを翻弄して両チーム最多の12得点をあげた。

 藤坂がボールを手にするたびに、何かが起きた。司令塔としてパス回しの起点となり、相手ディフェンスの穴を見つけては抜群のスピードでシュートに持ち込む。上から横から下から、豪快なジャンプシュートに超速のクイックシュート。右手から放たれたボールが刈谷のネットを揺らすたびに、歓声が響き、ため息が漏れた。

 試合開始直後から「藤坂劇場」だった。開始15分までに4得点し、強豪相手に8-11と食い下がる原動力となった。ところが、15分過ぎからコートを離れてベンチへ。不在の間に差を広げられ、前半で13-23と大量10点差をつけられてしまった。

 相手に引き離されるチームをベンチで見て「早く出たかった。コートに立ちたかった」と話したが、藤坂と同じCBとして大同の黄金時代を引っ張った末松誠監督は「勝負どころにベストな状態で使うために、休ませた」。結果的に完敗につながったが、13得点した前日の1回戦レッドトルネード佐賀戦の疲れもあった藤坂は「連戦に耐えられる体力もつけないと」と話した。

 もちろん、刈谷は徹底マーク。ラース・ウェルダーHCはミーティングで藤坂の名前を連呼したという。PV山田信也は「スピードに乗せると手に負えないので、しっかりつくこと、利き手側を守ることに集中した。それでも、何度かやられましたが」。ディフェンス力が武器の刈谷をも苦しめる藤坂の得点力。RB渡辺仁は「もう、リスペクトですよ」と、新世代のスターに舌を巻いた。

両チーム最多の12得点をあげた藤坂尚輝【写真:中戸川知世】

将来的に海外移籍を視野も「今は大同で日本一に」

 大差をつけられた後半、藤坂は再びスタンドを魅了する。「こんな大差の試合を見せられたら楽しくないだろうから」と観客を意識。股下シュートの奇襲を披露し、縦パスを空中のCB可児大輝に通す難度の高いスカイプレーもみせた。「いろいろとアイデアが頭に浮かんだので、やってみました。お客さんも少しは喜んでくれたと思う」。プロハンドボーラーとしての意地をみせた。

 23年の世界ジュニア選手権得点王。日本は19位に終わったが、世界レベルの得点力をアピールした。昨年のパリ五輪では、日本代表公式戦経験がないままメンバー入り。昨年12月に大同入りし、すぐに絶対的なエースになった。藤坂が「憧れの選手だった」と話す末松監督はその才能を絶賛し「試合中も、藤坂が成長することだけを考えている」とまで口にした。

 福井・北陸高から日体大を卒業したが、これまで日本一の経験はない。将来的には海外移籍も視野に入れながらも「今は大同で日本一になることが目標です」。日本リーグ最多18回の優勝を誇るものの、最後の優勝は14年。「まずはリーグHで成長して、チームを優勝させたい」と言い切った。

 昨年から「ほとんど休みなくハンドボールをしている」と話す藤坂。リーグ戦は終わったが、来週には日本代表合宿、さらにソウルでの日韓戦(21日)が待つ。「日本代表でも活躍して、しっかりと定着したい」と話し「来年は名古屋でアジア大会もあるので、そこでも勝ちたい」と代表にも意欲をみせた。

 ボールを持つだけでファンをワクワクさせるようなプレーが藤坂の持ち味。スタンドからは「藤坂のプレーを見ることができて、今日は来たかいがあった」という声がもれる。リーグH、日本代表、藤坂のゴールが、日本ハンドボールを熱くする。(荻島弘一)

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

荻島 弘一
1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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