住宅購入の判断に大いに関係する住宅ローン。不動産や金融について多くの知見をもつ、公認会計士ブロガー千日太郎さんより、2021年11月の住宅ローン金利について世界情勢や国内金融市場にインパクトを与えそうな事柄を踏まえ、解説いただきます。

10月は7ヶ月ぶりの引き上げに

2021年6月から9月までは新型コロナウイルスの感染再拡大に伴い長期金利が低下していき、連続して【フラット35】の金利は下がり続けてきました。2021年9月に菅首相が辞意を表明してから日経平均株価が急伸しそれまでは下がる傾向にあった住宅ローン金利は上昇し始めました。

【フラット35】金利推移(機構団信加入の場合)

10月に岸田政権が発足してから株価は下がりましたが、米金利の上昇が波及して国内金利は上昇を続けています。こうした状況下で2021年11月の【フラット35】金利はどうなるのか。その動向を予想します。

岸田政権下の株価下落と米金利上昇の波及

2021年6月17日から2021年10月13日までの日経平均株価と長期金利の動向をグラフにしました。

日経平均と長期金利の推移:2021年6月17日〜10月13日

長期金利データ参考元:インベスティングドットコム 日本版

青い折れ線グラフは日経平均株価、オレンジの折れ線グラフは日本の長期金利を表しています。9月3日に菅首相が辞任の意向を表明すると、菅政権の後に誕生する新政権への期待と、過去約30年で衆院解散実施日から総選挙の投開票日までの期間中の株価はほぼ上昇してきたという経験則から日経平均株価は急伸しました。

株高となると、その株を購入するために比較的安全資産とされる債券は売られて債券価格が下がります。債券価格と金利(利回り)の間には負の相関関係があり、逆方向に動きます。債券価格が上がると利回りが下がり、債券価格が下がると利回りが上がるのがセオリーです。

その後、次期総裁が岸田氏に決まり閣僚人事が発表されると、株価は上昇前の水準まで下がっています。しかし、国内長期金利は日経平均株価とは反対に右肩上がりを続けています。

これは9月22日に米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、量的緩和縮小(テーパリング)の開始を11月あたりに決定する見通しを表明し、利上げの時期を2022年に前倒しする可能性を示したためです。

この記者会見の直後から米中央銀行による債券買取縮小に警戒感を示した投資家によって米国債には売りが入り、米長期金利が急上昇しました。米国債を売ろうとする投資家は日本国債も保有しています。米国債を売る流れが日本国債を売る流れにも波及し、日本の債券価格も下がり、日本の長期金利も上昇しているのです。

今後の長期金利の動向と【フラット35】の2021年11月金利動向の関係

米国金利の上昇が波及して国内金利が上昇すると、2021年11月の【フラット35】の金利にも影響する可能性があります。

【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み(※記事最下部参照)からすると、住宅金融支援機構が毎月発行する機構債の表面利率が発表されるタイミングで長期金利が下がっていると、機構債の表面利率が下がるため、【フラット35】の融資金利も下がるのです。

過去の長期金利の推移と【フラット35】の金利推移

2021年7月から10月の長期金利と【フラット35】買取型の金利推移を振り返ってみましょう。青い棒グラフ(左の軸)が【フラット35】買取型で、オレンジの折れ線(右の軸)が長期金利です。

長期金利と【フラット35】金利の推移(筆者作成)

長期金利(オレンジの折れ線)の縦軸は0.4%とし、【フラット35】買取型の金利(青い棒グラフ)の縦軸も0.4%としてレンジを合わせています。2021年7月から10月までの長期金利の変動幅と【フラット35】の変動幅はほぼ合致しています。

前述したとおり米金利上昇が波及して国内金利が上昇してきています。機構債の表面利率が発表される時点の長期金利がこのまま0.05%〜0.1%の水準で推移したならば、11月の【フラット35】の金利は1.32%〜1.37%くらいの水準となるでしょう。

先行きが不透明な局面ではゆとりある計画を

米中央銀行の利上げ憶測に反応して米長期金利が上昇し、日本の長期金利に波及しています。この記事を執筆している時点では、上昇するとしても機構債の発表時点の国内長期金利は0.1%を超えるまでにはならないだろうと予想しています。

しかしそもそも金融市場の金利動向は想定通りに動くとは限らず、私の予想に反して急上昇する可能性もあります。特にコロナ環境下においては事前に予想することが難しいイレギュラーな金利動向が観測されています。

金利が想定外の動きになったとしてもある程度吸収できる、無理のない資金計画を立て、実行していく必要があります。住宅ローンの返済計画は無理せず、出来るだけゆとりのあるものにするようにしてください。

 

※参考【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み

【フラット35】(買取型)の仕組み

住宅ローンの【フラット35】(買取型)は、上図のように住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する傾向があるのです。

※本記事は、執筆者の最新情勢を踏まえた知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、内容について、弊社が保証するものではございません。