元日に発生した能登半島地震の影響が、子どもの居場所にも及んでいる。石川県珠洲市ではいま、小学生が放課後や長期休みを過ごす「放課後子ども教室」の支援員が足りない。災害時、子どもが自由に遊べる環境をどう守るのか。そんな課題に直面する現場を訪ねた。

 3月下旬、同市の多目的ホール「ラポルトすず」で、20人ほどの子どもたちがおもちゃで遊んだり、走り回ったりしていた。珠洲市の支援員2人と、ボランティアのスタッフ3人が見守る。

 この「一日児童クラブ」は春休み期間中、市内各地の子ども教室を集約する形で開設。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンと児童健全育成推進財団らが協力し、ボランティアを募った。

 千葉県松戸市から参加した芳賀万紀子さん(49)は「思ったより元気そうでよかった。1人でぽつんとしている子もいたが、そばに行くと、話しかけたり、手を握ったりしてくれた」と話す。

 だが、市内に宿泊場所がないため、ボランティアは金沢市から毎日往復6時間ほどかけて通っていた。

 4月に入って新学期が始まり、各校の教室が再開してからは、ボランティアを募集できていない。支援員の水上康子さん(57)は「これからは自分たちでやっていくしかない」というが、不安も大きい。

 市内では、いまもほぼ全域で水道が復旧していない。トイレも仮設で、子どもは使い慣れていないため、付き添いが必要になる。校舎が被害を受けたままになっていたり、通学路がまだ整備されていなかったりして、危険も多い。体育館が避難所、校庭が仮設住宅となっていて遊ぶ場所も制限されている。「普段より気を使うことが多く、どう安全を守るかで精いっぱい。子どもがのびのび過ごせる環境ではない」

 市によると、地震前、支援員は常勤11人、非常勤も合わせると30人ほどいた。子ども教室は市内に8カ所あり、どの教室でも2〜3人の支援員が常にいる状態だった。

 地震後は市外への避難などによって児童数が減り、教室は7カ所に。支援員も減少し、常勤は8人になった。非常勤と合わせても計14人。30人以上の子どもがいる教室もあり、「なんとかやりくりしている状態」(市の担当者)という。

 市教育委員会事務局の坂尻寛志次長は「親も生活を立て直さないといけなくて大変。子どもの数は減ったが、(教室の)ニーズはむしろ高くなっている」と話す。「避難所から通っている支援員もいるので、できるだけ休ませたい」として、支援員が入れないときは事務局の職員が対応することにしているという。

 市は支援員を募集している。資格は不要。問い合わせは市教委事務局(0768・82・7826)へ。(藤谷和広)