【神奈川】かつてのニュータウンが高齢化にあえいでいる。住民の新陳代謝が進まず、人口が減るなか、目下の課題は防災だという。

 相模原市緑区、旧城山町の若葉台住宅は半世紀前の1974年に開発が始まったニュータウンだ。戸建て住宅で構成され、かつては「城山レークタウン」と呼ばれていた。

 建築家の黒川紀章氏(2007年死去)がグランドデザインし、熊谷組(東京)が開発、76年に入居が始まった。

 中央部に公園を設け、地区内の学校や商店街は公園や歩道を歩いて行き来する歩車分離の構造。環境や健康、景観に配慮した未来志向の街だった。

 だが、開発当時、住宅を購入した30〜40代は現在70代〜80代。高齢化率は57%に達し、ピーク時に約3500人いた人口は約1200人に減少。核家族志向もあって、子どもたちは家を出ていき、住民の世代交代が進まなかった。

 住民団体「若葉台住宅を考える会」の田中潔事務局担当(79)は「今後、急速に人口減少が進み、空き家の増加、自治会活動の空洞化などの懸念が増す」と話す。

 こうした危機感から田中さんたちは2017年に「考える会」を結成し、大学や研究者の力も借りながら、持続可能な自治会活動へのてこ入れ、若い世代の勧誘に取り組んできた。

 特に懸念されるのは、防災だという。防災対策の主体となる自治会活動が停滞気味だからだ。

 そこで26日午前10時から若葉台小栗公園で、楽しく遊びながら、自然災害への備えを考えようという催し「あそぼうさい×ポニー乗馬」(若葉台住宅を考える会主催)を開く。

 まちづくりプロデューサーで日本総研主席研究員の今井邦人さんと「移動式あそび場全国ネットワーク」代表の星野諭さんを招き、非常用トイレの体験会や身の回りにある紙やペットボトルから避難生活に必要な道具を作るワークショップなど、防災の備えを学ぶ。能登地震の写真も展示し、現地で活動した今井さん、星野さんの話も聞く。

 また、子ども向けにアニマルセラピーに取り組む公益財団法人ハーモニィセンターによるポニーの乗馬体験もある。4台のキッチンカーも参加、食事も楽しめるほか、地域内で実証実験運転をしている公共交通、グリーンスローモビリティーの新型車両も展示する。

 イベントにはもうひとつ狙いがある。近年はPR策も奏功し、団地に転入してくる若い家族もちらほらいるという。そこで街の外に住む若い家族にもっとニュータウンの魅力を伝えたいと狙う。

 田中さんは「若い世代に若葉台を知ってもらい、愛着あるまちを後世に残したい」と話している。(三木一哉)