世界の7都市を移住しながら学ぶ米国のミネルバ大学が世界的な注目を集める。日本の「さとのば大学」は、地方の町への移住を繰り返して地域から学ぶ点など、類似点がある。「消滅可能性都市」が話題になるなか、若い世代の地方移住を後押しすると期待する声も上がる。

 さとのば大に入って3年目の明神光竜(ひかり)さん(21)は、故郷の高知県から岐阜県郡上市、宮城県女川町と春のたびに移り、この4月からは鹿児島県枕崎市に住む。

 中学で不登校を経験し、高校は全日制へ進んだ。「日本を出よう」と決意し、ミネルバ大を目指したが不合格に。さとのば大は、そのミニチュア版のように感じたが、「冒険して揺るぎない力をつけたい」と飛び込んだ。「困難にぶつかっても次の手を考え、適応していけるようになってきた。積み重ねた経験が生きている」と話す。

 さとのば大学の学生は、オンラインでの講義と、地域で自分でテーマを決めて取り組むプロジェクト型学習を組み合わせ、4年間で4カ所に住んで学ぶ。講義は地域コミュニティーやソーシャルデザインの専門家らが担当する。

 国が認可した正式な大学ではなく、ミネルバ大に比べれば規模も知名度もはるかに小さいが、取り組みとしては似ている点も多い。さとのば大は大都市から離れた地方での暮らしを、より重視している。

 「地方の町は人と人との距離が近く、課題も見えやすくて若い人が地域から学ぶには適している。1年間そこに住むことで、さまざまな体験ができて成長と自信につながる」。発起人で運営会社社長の信岡良亮さん(42)は、そう話す。

 4年制コースの開講は3年前で、現在の在籍は1〜4年生15人。他大学の通信制課程で学位取得も目指す学生が多い。

 学生の受け入れは、秋田県五城目町や北海道名寄市、長野市など15カ所。地域の活性化などに取り組む団体と提携して学生の暮らしと学びを支援する。

 目下、最大の課題は学生数を増やすことだ。信岡さんは「探究学習に取り組む高校や通信制高校との連携などを含めて手ごたえはある。若者の自己肯定感が育ちにくいと言われるなか、さとのば大で地域での学びを体験し、人と関わる力や自信を付けてほしい」と話す。(上野創)