三重県四日市市は、昨年11月からふるさと納税の返礼品にしていた「松阪牛」を、21日付で取りやめた。松阪牛ブランドの生産区域以外の自治体が返礼品とすることに疑問の声があったといい、四日市市の森智広市長は「松阪市長からも直接、私のところへ相談があった。誤ったことをしていたわけではないが、自治体間の対立は本意ではなく、取りやめることにした」と、同日の記者会見で述べた。

 四日市市によると、同市が牛肉を返礼品としていた「松阪牛」は、市内の事業者が提供していた。この事業者は同市で生産した黒毛和牛を、松阪牛ブランドの生産区域に移して肥育、出荷している。

 「松阪牛」の定義は、生後12カ月齢までに松阪市など松阪牛ブランドの生産区域に導入され、それ以後の移動は同区域内に限る、などの条件を満たすとしている。この事業者も条件を満たしている。

 一方、牛は四日市市でも一定期間、育てられており、同市が総務省や県に確認したところ、ふるさと納税返礼品の地場産品基準に該当するとの回答を得たという。

■市長「ふるさと納税全体には影響はない」

 ところが、昨年11月21日に返礼品としてふるさと納税サイトに掲載したところ、生産区域から疑問の声があり、松阪市から昨年12月と今年2月に確認などの連絡が入った。松阪市の竹上真人市長からも森市長に直接話があり、生産者の思いを伝えられたという。

 さらに今月、この問題が一部で報道されたことから、四日市市に「市が提供している松阪牛は、『松阪牛』ブランドではないのではないか」などの問い合わせが相次ぎ、提供している事業者から取り下げの申し出があったという。同じ事業者が扱っていた「近江牛」も返礼品から外した。

 昨年度に同市にあったふるさと納税の寄付は9353件、3億1824万円。うち、松阪牛を返礼品としたのは33件、60万円だった。

 森市長は「松阪牛の返礼品は、四日市市にとってキラーコンテンツではなく、寄付額は0.2%にも満たない。四日市市のふるさと納税全体には影響はない」と強調している。(鈴木裕)