福島、群馬、新潟、栃木の4県にまたがる尾瀬国立公園が21日、山開きした。好天に恵まれ、大勢のハイカーが、ミズバショウが咲き誇る湿原の雄大な風景を堪能した。

 福島県側の玄関口となる檜枝岐村であった山開き式典には、環境省や群馬県片品村、新潟県魚沼市の関係者が出席し、約300人のハイカーらとともに安全を祈願した。式典は毎年、3市村が持ち回りで開催している。

 檜枝岐村の平野信之村長は「いつ訪れても美しく、多くの人に安らぎと感動を与える尾瀬を、次の世代にもつなげていきたい」とあいさつした。(斎藤徹)

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 国内最大の山岳湿原で、有数の観光地でもある尾瀬。環境省と檜枝岐村など周辺自治体は、人口減少時代でも貴重な自然を将来にわたり保護し持続的に活用していくため、魅力向上や情報発信の強化に乗り出す。

 同省などは今年2月、「尾瀬国立公園利用アクションプラン」をまとめた。人口が減っていくなかでも、国立公園としての尾瀬の質を維持し、次世代に継承していくことを目的にしている。

 同省によると、尾瀬国立公園への入山者は1996年の65万人をピークに減少が続き、コロナ禍の2020年には、統計史上最低の10万7千人にまで落ち込んだ。コロナ禍が明けた後は徐々に増えており、昨年は16万3千人にまで回復した。

 ただ、利用者は50〜60代が多く、若い世代には尾瀬が浸透していないことが、同省の調査でわかった。

 木道の整備や観光関連事業の継続など、国立公園として維持していくには一定の利用者の存在が不可欠だ。入山者の減少を危ぶむ同省や福島・群馬・新潟3県や檜枝岐村、片品村など関係団体は、交通アクセスや入山情報の一元化、自然保護体験プログラムの多様化など、さらなる魅力発信に取り組むことにした。

 その一つが、江戸時代に会津と群馬県を結ぶ交易路として開かれた「会津沼田街道」の再整備だ。檜枝岐村側の沼山峠にある休憩スペースを2倍程度に広げて板敷きのデッキにし、高い位置にも階段やベンチを新設し、尾瀬沼などの風景を楽しめるようにする。

 さらに、入山者に街道の歴史や周辺の自然環境の価値を知らせる案内板も設置する。来年度から整備に取りかかる計画だ。

 檜枝岐村の平野信之村長は「適正な数の入山者に利用される『持続可能な尾瀬』を、次世代に残していく必要がある」と話す。環境省関東地方環境事務所の松本啓朗所長も「にぎわい創出と自然保護が両立するような取り組みを、関係自治体と一緒に進めていく」としている。(斎藤徹)