福岡市は、市内7カ所の老人福祉センターにある60歳以上の市民ら向けの無料入浴施設を廃止すると決めた。2019年度には約18万8千人が利用していたが、コロナ禍で20年3月から休止していた。市は施設の老朽化や、各家庭の風呂の設置率向上などを廃止の理由に挙げているが、存続を求める声も出ている。

 センターは市内7区に1館ずつあり、高齢者向けの相談や健康増進・教養向上の講座が開かれている。入浴施設は60歳以上の市民が利用でき、一部施設は市民であれば誰でも利用できた。19年度はセンター利用者の約4割が利用した。

 旧厚生省のセンター運営に関する要綱では、入浴施設を特定の場合を除き「もっぱら設けなければならない」としている。今回、市は厚生労働省に確認し「自治体の判断によって必ずしも要綱に従わなければならないわけではない」との回答を得たという。

 市の廃止決定に対し、市民団体が「入浴事業は、高齢者の憩いの場、健康づくりの役割を果たしてきた」などとして存続を求め、市議会に請願を提出。市議会福祉都市委員会で8日採決され、(1)センター近隣の市民が中心に使い、利用に偏りがある(2)入浴施設改修後の機能強化に期待――などとして不採択となった。17日の市議会臨時会でも不採択となった。(伊藤未来)