大阪空襲で家族4人を失った在日朝鮮人の鄭末鮮(チョンマルソン)さん(90)=滋賀県野洲市=の体験を基にした創作劇「キャンパー」が6月1日、大津市で上演される。その日は第2次大阪大空襲から79年目にあたる。

 大阪空襲は、1945年3月13日から終戦前日の8月14日にかけてのB29戦略爆撃機100機以上による「大空襲」8回を含め、50回以上に及ぶ。空襲全体の犠牲者は計約1万5千人とされる。

 空襲時に大阪市内で暮らしていた鄭さんは、45年6月7日の第3次大阪大空襲で母ときょうだい3人を亡くした。当時11歳だった。空襲後は、滋賀県で暮らした。差別の恐れから通名を使い、本名と共に空襲体験も70歳を過ぎるまで封印してきた。

 創作劇「キャンパー」は、大阪を拠点に活動する「劇団タルオルム」が手がけた。劇団代表の金民樹(キムミンス)さん(49)が鄭さんをモデルに脚本を書いた。主人公の女性が、かつて空襲で焼けたキャンプ場で、少女の幽霊と出会う物語だ。これまで大阪の朝鮮人犠牲者追悼集会やウトロ平和祈念館前広場(京都府宇治市)で上演されたが、滋賀県では初めて。

 金さんは「幼い時に戦禍で家族と離ればなれになることがどれだけ壮絶か想像してほしい。そんな朝鮮人たちに寄り添おうとしている日本人がいることも知ってほしい」と話す。

 スカイプラザ浜大津で1日午後1時と午後5時開演。2回目の上演後に鄭さんのトークが予定されている。前売り一般3千円など。チケットは事前予約が必要(QRコード)。問い合わせはメール(37otonari3@gmail.com)へ。(林利香)