【神奈川】懐かしい木造校舎で給食を一緒に食べ、お年寄り同士が思い出話に花を咲かせる。愛川町は20日、そんな初めての交流会を開いた。過去を思い出し、脳の働きを活発にさせる「回想法」と呼ばれる取り組みで、約40人が参加した。

 町内の半原小学校内に残る平屋の木造校舎は、1926年に地元の宮大工が建築し、78年まで校舎として使われていた。その後、一時期は郷土資料館として活用され、現在は「懐かしの学び舎(や)」として、交流の場になっている。

 この日集まったのは、町内の主に70代〜80代の高齢者。教室の木製の机とイスで、まずは町郷土資料館学芸員の岩田慎平さんによる昭和20年〜30年代の世相話に耳を傾けた。

 当時の流行歌である「岸壁の母」や「高原列車は行く」「黄色いさくらんぼ」などを流しながら、集団就職、ゴジラ映画、皇太子ご成婚……といった話題を解説。その後、席の近い人同士で、昔の思い出を語り合った。

 「子どものころは上履きなんかないから、みんなゴム草履だった」「ゲタを履いている子もいたけど、すり減ったものばかり」「そうそう」「あははは……」。お年寄りたちの表情が和らぐ。

 小学校の調理場で作ったこの日の給食は、塩ラーメン、コッペパン、ひじきのマヨネーズあえ、デザート(お米のムース)、牛乳。いまの子どもたちに人気のメニューだ。

 給食を食べ終えた引木政昭さん(77)は、「私が小学生のころに比べて、おいしくて食材も工夫されている。あのころ長い通学路を多くの友だちと歩いたことを思い出した」。近藤敏子さん(74)は「今日は小学生の孫と同じ給食を食べることができてうれしい。懐かしい話も楽しかった」。

 町は今回の交流会をきっかけに、参加した人がそれぞれの老人クラブなどで回想法を取り入れてくれることを期待しているという。(中島秀憲)