【神奈川】よこはま動物園ズーラシア(横浜市旭区)で飼育されているマレーバクのひでお(オス、2歳)が来月、国外での繁殖のため、台湾の「台北市立動物園」に出発する。5月18日には同園で、出生時から世話をした飼育員の矢口茜さん(31)が「特別ガイド」として、よりすぐりの写真をまじえてエピソードを語った。

 矢口さんによると、「マレーバク界の英雄になってほしい」との思いから、ひでおと名付けた。

 体が小さかった赤ちゃんの頃は、しばしば背中に母ロコの頭をのせ、枕がわりになっていた。「親が子の腕枕をすることはあっても、子が親の枕になるのは見たことがない」と矢口さん。ひでおはまんざらでもない様子だったという。

 大好きな母との別れに備え、この1年はお互いの姿は見えるものの、扉で隔てた状態で過ごす訓練を行ってきた。

 特別ガイドを聞きに来た荒井仁美さん(10)は、「離れるのは寂しいけど、台湾でも頑張ってほしい」と話した。

 マレーバクは、黒と白のツートンが特徴。現存するバクのうち唯一アジアに生息するが、生息地の破壊などで個体数が減少し、国際自然保護連合のレッドリストで絶滅危惧種に指定されている。今回の移動は日本動物園水族館協会マレーバク管理計画に基づいて実施される。

 ひでおは検疫のため非公開施設に移動し、同園で公開中のマレーバクは、ロコとオスのアルタイルの2頭となった。(中嶋周平)