市民が自身の美術作品を持ち寄る神奈川県横須賀市の「第83回YB公募展」(横須賀美術協会主催)が16日から市文化会館で始まった。会員・会友のほか、一般による油彩や日本画、版画、彫刻、立体造形など約130点が展示。入場無料、22日まで。

 このうち、横須賀美術館賞に選ばれた三浦市の石渡美佐子さん(83)は、地元・三崎の漁港の風景を「岩壁の片隅」と題して油彩で表現。全国有数のマグロ水揚げ量を誇った往時の三崎に思いをはせつつ、様変わりした現在の漁港の一角にある古びた倉庫や漁具、さびた鉄の係留柱などを落ち着いた色合いで描いた。

 油彩歴20年。実家が漁師の家だったといい、「幼少期からなじんだ場所。海や船よりも、身近な足元に思いを込めました」と目を細めた。

 YB公募展は1941年、軍による市民生活の統制が強まるなか、文化活動を求めて十数人の美術家が横須賀美術協会を結成し、作品展を開催したことに始まる。終戦後の混乱期もいち早く活動を再開し、協会の略称を「YB」として公募展を重ね、市民の文化向上に貢献してきた。

 元副会長で中学の美術教諭だった角野竹博さん(75)は「教え子たちには、感じたことをそのまま表現する努力を伝えてきた。技術より先に感性を磨くことが大切。来館者のみなさんにも、公募展の作品を見てそれぞれの作者の感性を感じてもらえれば」と話していた。(具志堅直)