三重県内でツキノワグマの出没情報が続々と寄せられている。今年度は11日までにすでに25件あり、過去最多だった昨年度40件の半数を超えた。11日には住宅地付近でも子グマが目撃され、県は注意を呼びかけている。

 11日午前10時20分ごろ、尾鷲市新田町4丁目の山裾に近い道で、「子グマがいた」と近くの男性から市に通報があった。真っ黒で体長は40〜50センチあったという。

 付近は民家が並ぶ。市は市街地全域に防災行政無線で注意を呼びかけ、尾鷲署とともに付近のパトロールを続けている。尾鷲小学校の通学路でもあるため、当面は近くの矢浜小も含め下校時に教員が引率する。

 県によれば、県内で4月に4件、5月に7件、6月は11日までに14件、山林を中心に目撃情報などが寄せられている。地域別では尾鷲市が8件、熊野市が7件、伊賀市、大紀町、紀北町で各2件など。人身被害は出ていない。

 県内では昨年度、40件の出没情報があった。統計を取り始めた2006年度以降で最多だった。4〜5月に1件のみだったが秋以降に急増したという。

 県みどり共生推進課の山田長生課長は「出没情報はこれまで松阪以南が中心だったが県全域に広がっている。人里に近い場所でも目撃されるようになった。1年を通して山林でのエサが不足しているからではないか」と説明する。住民の関心の高まりも通報件数に反映しているようだという。

 5月ごろは母グマと別れる若いクマの出没が増える。6〜7月ごろはオスがメスを求めて行動圏を広げるため、普段出没しない地域でも見かけることがある。10〜12月は冬眠前に大量のエサを求めて活発に動き回る。

 県は出没場所を地図で示すなどホームページで情報の提供を始めた。山野に入る際はラジオなど音がするものを携帯する▽クマの行動が活発な早朝や夕方、人の気配が分かりにくい風雨が強い時は特に注意――などとしている。

 一見勝之知事は「クマに出合ったら、背中を見せたり走って逃げたりせず、目を離さずゆっくりと後ずさりすることを心がけてほしい」と呼びかけている。

 環境省によれば、全国の昨年度のクマによる人身被害件数、被害者数は東北地方を中心に198件219人(うち死亡6人)で、いまの形で統計を取り始めた06年度以降、最多だった。今年度も4、5月で13件15人(うち死亡0人)の人身被害が起きている。(高田誠)