国税庁は1日、今年1月1日時点の路線価を公表した。全国平均は前年比2.3%増で、3年連続で上昇した。上昇幅が2%を超えるのは16年ぶり。インバウンド(訪日客)の回復や各地で行われている再開発、住宅需要の高まりが地価を押し上げている。

 都道府県別の平均路線価は29都道府県で上がり、上昇幅は大きい順に、福岡(5.8%増)▽沖縄(5.6%増)▽東京(5.3%増)▽北海道(5.2%増)▽宮城(5.1%増)。愛知は3.2%増、大阪は3.1%増だった。

 税務署ごとの最高路線価の上昇率1位は長野県白馬村(32.1%増)、2位は熊本県菊陽町(24.0%増)だった。それぞれ、観光客の増加、半導体メーカー「台湾積体電路製造(TSMC)」の進出が要因。3位は大阪市西区(19.3%増)で、隣接する同市福島区に建設中のタワーマンション(46階建て)は平均販売価格が1億円を超え、周辺ではJR大阪駅の北側で大規模再開発地区「グラングリーン大阪」(うめきた2期)の建設が進みマンションやホテルの需要が増えている。大阪・ミナミの心斎橋周辺も前年の横ばいから10%超の上昇に転じ、コロナ禍で目立っていた空き店舗が再び埋まり活気が戻っている。

 路線価が全国で最も高かったのは、39年連続で東京都中央区銀座5丁目(銀座中央通り)で、1平方メートルあたり4424万円(前年比3.6%増)だった。

 都市未来総合研究所の湯目健一郎常務執行役員は「コロナ禍からの脱却が本格化してインバウンドが回復し、住宅需要や都心部のオフィス需要も高まっている。金利の急上昇や世界経済の変調がない限り地価は底堅いだろう」と話している。(花野雄太、市田隆)

■被災地に「調整率」 災害では7例目

 金沢国税局は1日、能登半島地震の被災地の路線価に「調整率」を適用すると発表した。被害の大きさに応じて評価額が10〜45%引き下げられる。適用は阪神・淡路大震災や東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨などに続き、7例目。

 2023年2月28日〜24年末に相続した土地と、23、24年に贈与を受けた土地が対象。被災者の相続税や贈与税の負担を軽くする狙いがあり、24年1月1日時点の路線価に調整率をかけた額が土地の評価額となる。

 調整率が最も高いのは、輪島朝市がある輪島市河井町や、珠洲市中心部の飯田町などの0.55(引き下げ率45%)。液状化現象が激しかった内灘町の一部は0.65(同35%)だった。(安田琢典)