訪問介護や看護に携わる職員が、サービス利用者やその家族から暴言などを受ける「在宅ケアハラスメント」が問題になっている。第三者の目が届きにくく、ケア人材の離職につながる恐れもあり、茨城県が対策に乗り出した。

 「利用者家族から見下すような言い方をされることもあった」。県内で十数年間、ケアマネジャーとして在宅ケアに携わった50代女性は、そう振り返る。

 ショートステイの日程調整で家族の希望に沿えなかった際に「あんたの考えは聞いていない」「担当を変えろ」と大声で怒鳴られ、恐怖を感じたこともあったという。

 在宅ケアの現場では、多くの職員がハラスメント被害に遭っていると考えられる。昨年6月に県が実施した調査で、県内の訪問看護やケアマネジャーらが所属する84事業所のうち半数以上が「職員が1回以上、在宅ケアハラを受けたことがある」と答えたという。

 県が作ったガイドラインによると、在宅ケア現場のハラスメントは大きく三つに分けられる。

 身体的暴力は「ものを投げる」「たたく」など。「大声を出す」といった精神的暴力や、「必要もなく触る」などのセクシュアルハラスメントも含まれる。

 こうした状況から、県は利用者の自宅を訪問する介護・看護職員が安心して働けるように、「いばらき在宅ケアハラスメント相談窓口」を1日に開設した。

 窓口を利用できるのは、県内の訪問介護や訪問看護事業所に所属する職員と管理者。匿名での相談も可能だ。介護や看護の現場で働いたことがある経験者2人が電話やメールで相談を受ける。内容によっては、弁護士への相談を1回(60分)無料で利用できるという。

 ガイドラインでは、事業所や被害を受けた職員がどのようにハラスメントに対応すべきかについても明記した。

 事業所には、ハラスメントへの対処方法をまとめたマニュアルの整備や、職員を守る体制の構築を求める。職員には提供するサービスについて、利用者や家族に丁寧な説明をすることとしたうえで、被害に遭った際は身の安全を優先し、場合によっては「その場を離れる」などと記載。暴行を受けた場合には警察へ通報することも明記した。

 県の担当者は「職場で話しにくい場合には気兼ねなく窓口に相談してほしい」と利用を呼びかけた。

 年末年始を除く、平日の午前10時〜午後4時に、電話(029・303・7600)またはメール(homecare@ibaraki-welfare.or.jp)で相談を受け付ける。(宮廻潤子)

■在宅ケア現場でのハラスメント

・身体的暴力(危害を回避したケースを含む)

 ものを投げる、たたく、蹴る

・精神的暴力(個人の尊厳や人格を言葉や態度によって傷つけたり、おとしめたりする行為)

 大声を出す、理不尽な要求をする

・セクシュアルハラスメント(意に沿わない性的誘いかけ、好意的態度の要求、性的な嫌がらせ)

 必要もなく手や腕を触る、抱きしめる、入浴介助中にあからさまに性的な話をする

※県のガイドラインから