【岡山】倉敷市が2018年の西日本豪雨を受けて真備町箭田地区で整備を続けてきた「まびふれあい公園」が完成し、3日に記念式典が催された。市が19年3月から5カ年の復興計画に基づいて進めてきたハード対策はすべて終了。関係者約220人が節目を祝った。

 整備したのは豪雨で決壊した小田川と支流の高馬川の合流点沿いの計4.5ヘクタール。このうち堤防を挟んだ北側の2.8ヘクタールは、約6メートルかさ上げして堤防と同じ高さに整地した。小田川の掘削工事で生じた土砂を活用した。残る1.7ヘクタールは河川敷を整えた。

 広々とした芝生広場には、すべり台やアスレチック遊具を用意し、憩いの場となる。災害時には避難者や緊急車両用の駐車場に活用される。河川敷部分を合わせて約400台を止められる。ヘリポートとしても使える。

 公園中心部には平屋建ての複合施設「竹のゲート」(約500平方メートル)を整備。建材には地元特産の竹を使った。一室は「まなびのへや」とし、豪雨当時の様子を伝えるパネルを展示した。

 子どもたちの防災教育や市外からの視察や研修を迎える場にしたいという。災害時には要支援者の一時避難所にあてられる。

 もう一室は防災備蓄倉庫に。約300人が一日過ごせる食料や資材を保管している。

 芝生広場には災害時に仮設トイレが設置できるマンホールを設置。簡単な組み立てでかまどとなるベンチも配された。

 公園の設計を手がけたのは建築家の隈研吾氏。開園式で隈氏は「防災にとどまらず、市民のよりどころをつくるための重要なプロジェクトだった」と説明した。「防災と交流の機能を併せ持つモデル施設になれば。私には思いつかないアイデアを出して活用してほしい」と期待を込めた。

 公園には今年5月、全国植樹祭で来県した天皇皇后両陛下が訪れている。訪問時には、復興に取り組んだ住民らの話に耳を傾けていた。

 伊東香織市長は、開園式のあいさつで「両陛下とも真備の人たちを大変心配しており、会うことができて本当に喜んでいた」と当時の様子を紹介した。

 「6年前の被災を教訓に災害に強いまちづくりを進めてきた。その経験を真備の魅力とともに全国に発信する拠点としたい」と話した。

 豪雨後、河川や道路、公共施設の復旧復興が急ピッチで進められてきた。最も規模が大きかった高梁川と小田川の合流地点の付け替え工事は今年3月に完了。公園の完成により、市は被災を受けたハード事業がすべて終わったとしている。今後は公園活用を含めたソフト施策が進められる。(小沢邦男)