計67人が死亡した熊本豪雨は4日で発生から4年を迎えた。入所者14人が亡くなった熊本県球磨(くま)村の特別養護老人ホーム「千寿園」跡地では住民が14個の竹灯籠(とうろう)に火をともし、冥福を祈った。

 当時、球磨川支流の小川からあふれた水が千寿園を襲った。近くの小川集落の住民も救助に駆けつけ、1階の入所者を2階に避難させたが、濁流にのみ込まれた入所者が死亡した。

 災害の恐ろしさと、助け合った記憶を語り継ぐ――。

 住民らは竹灯籠を作り、毎年この日に集まっている。わき水が出る、集落内の水くみ場で約20個の竹灯籠に火をともした後、今は更地になった千寿園跡地に移った。

 地域の自主防災会の小川豊明会長(70)は「月日がたつと記憶は薄らいでしまうが、語り継ぐことが尊い命を守ることにつながる」と話した。

 県内では災害関連死を含め球磨村や人吉市、芦北町など7市町村で67人が死亡し、2人が行方不明だ。仮設住宅の入居者は217世帯の412人でピーク時の1割以下まで減った。

 被災後に不通が続くJR肥薩線は八代―人吉間を鉄道復旧する方針で県とJR九州が4月に合意。ただ、復旧は33年度の見通し。

 また、県南部では人口の流出や経済の停滞が続き、「アフターコロナ」の観光客の回復も遅れている。

 半導体受託生産大手の台湾積体電路製造(TSMC)の進出や半導体関連産業の集積で人口増が続く県北部と対照的な「南北格差」への対応は、県政の大きな課題になっている。(今村建二、渡辺淳基)