市民が議会に提出することができる「請願」にはどんな意味や効果があるのでしょうか。朝日新聞奈良総局の公式キャラクター「はなくいどり」(オシドリ)とともに、Q&A形式で解説します。

 はなくいどり 最近、議会の記事でよく「請願」という言葉を目にするよ。提出や採択ってあるけど、何のことなの?

 A 奈良市の新ごみ焼却施設「クリーンセンター」の建設計画などについて、市議会の記事で書かれていた。ここ数年をさかのぼると、県域水道一体化や役場移転の話題で各地の市町村議会でも度々、登場してきた。

 請願は、国または地方公共団体の機関に対して意見を伝えることで、おおもとは日本国憲法第16条で保障された国民の権利(請願権)だ。

 地方議会に対する請願は地方自治法や各議会の会議規則で定められている。内容に同意する紹介議員が必要で、提出後は所管する委員会に付託され、審査結果が本会議に報告されて採決される。

 似たものに「陳情」があるが、こちらは紹介議員が要らず、扱いに明確な法律上の規定がない。

 請願が本会議で賛成多数となって認められれば採択となる。首長や関係機関は誠実に処理しなければならない。ただ、法的拘束力はない。

 は 採択されても求めたことが保証されるわけじゃないのか。

 A 提出が首長らへの圧力になるとも言い切れない。奈良市は3月に七条地区を建設候補地とするクリーンセンターの整備案を発表したが、これは同地区が提出した建設反対の請願が市議会で審査中の出来事だった。

 あと必ずしも採決まで至るとは限らない。慎重に審査するための「継続審議」を繰り返して4年に一度の市議選を迎えると、その請願は審査対象でなくなる。2013年8月から17年7月までに奈良市議会に提出された請願は26件。同月に選挙があり、うち13件が「審議未了」に終わった。火葬場やクリーンセンターに関する内容だった。

 は 審査ってそんなに時間がかかるんだ。

 A 質疑が尽くされ、疑問点が全て解消されないと採決できない。市議会事務局の担当者は「審査の中で新しい事実が発見され、その時々の質疑が続くこともある」と説明する。議論が分かれる問題ほど時間がかかる。

 一方で、「採決に持ち込みたくない場合は引き延ばす」とこぼす市議らもいる。その時の議会内の力関係によっては採決で思い通りの結果が出るとは限らない。政局も絡んでいるようだ。

 は 最近、新しい動きがあったって?

 A 開会中の市議会6月定例会では、請願が立て続けに賛成多数で採択された。七条地区の住民らがクリーンセンターの「建設反対」を求める4件と、現在稼働中のごみ焼却施設・環境清美工場がある左京地区の住民らが施設の「早急な移転」を求める1件だ。

 七条地区を建設候補地とする案や左京地区で再び工場を建て直そうとする案は、市議によって意見が分かれる。

 過去には似た趣旨の請願が審議未了で終わった。今回、賛成した市議らは「いずれの請願も(建設候補地選びの基準となる)公害調停の順守を訴えている」ことから要望は妥当だと説明した。

 七条地区での建設を目指す市の計画に議会としてノーを突きつけた格好だ。整備案の発表など議会の同意を得ずに計画を進める市との間に溝が深まっているといえる。

 は 請願の採択に市はどう反応したの?

 A 仲川げん市長は今月10日の本会議で「真摯(しんし)に受け止めるべきものだと認識している」と答弁した。ごみ処理は市民全員の問題だから、これからも注視したいね。(富岡万葉)