首都のトップを決める東京都知事選(7月7日投開票)の告示から、27日で1週間が経った。選挙戦も中盤、街頭でSNSで候補者は1100万人超の有権者を前に選挙戦をどう展開しているのか。

 27日午後、前参院議員の蓮舫氏(56)は、港区内の事務所に訪ねてきた立憲民主党の小沢一郎衆院議員から激励をうけた。

 小沢氏は、平日は街頭演説をせずに主に公務に従事している現職の小池百合子氏(71)について報道陣に「選挙を一生懸命やって都民の皆さんに訴えるのが一番の仕事なんだよ。候補者なんだから」と指摘していた。蓮舫氏については「元気だ。あの元気でやれば大丈夫だ」と述べた。

 古巣の立憲と共産党、社民党の支援を受ける蓮舫氏は、街頭演説に野田佳彦元首相など立憲のベテラン議員らが連日応援に駆けつけて政権批判を展開している。共産や、支援する市民団体のメンバーも、街頭でチラシを配るなどして組織戦を繰り広げている。

 3期目を目指す小池氏は、平日は街頭演説をせず、公務の行政視察を重ねている。

 介護施設、防災に取り組むマンション、水門、コンテナターミナル――。26日には計4件の視察を行った。その前日も視察を2件。「2期8年。これまでの確認をし、さらに何が必要なのかは現場を見てよく分かる。大変有意義な視察を続けている」。視察の意義を問われ、報道陣に説明した。

 この選挙で初の屋外での演説は八丈島。告示後最初の週末の22日だった。

 自民党と公明党、小池氏が特別顧問を務める地域政党・都民ファーストの会が支援するが、議員がマイクを握る場面はない。小池氏の陣営は「小池さん以上の顔役はいない。最初から最後まで一人でマイクを握る」と話す。

 前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(41)は、1日に10カ所ほどの街頭演説を続けている。26日は「世田谷巡回ツアー」と題し、世田谷区内を回った。

 演説時間は短く、論点を絞って話している印象だ。同日午前8時だった東急二子玉川駅前での演説では、大手銀行に勤務した経験を背景に「経済人として初めての都知事を目指す。成長戦略として掲げるのは教育だ」とし、子育て支援に加え、教育の質を高めるために教員の働き方改革にも着手する考えを示した。

 このときの演説は5分だけ。聴衆とハイタッチし、次の会場に向かっていた。

 AIエンジニアの安野貴博氏(33)はAIを活用した選挙戦を展開している。

 「東京で子育てしていけるか、不安です」。記者がスマートフォンで「AIあんの」に話しかけると、少し間があいてから返事がきた。「その悩み、よくわかります」

 安野氏の公約を学習している「AIあんの」はYouTube上で24時間活動しており、街頭演説以外にも有権者との接触機会としている。27日時点でコメント欄に書き込まれた政策要望などへの回答は6千回を超えている。

 25日からは、電話をかけると音声でやり取りできるようになった。記者の質問には、教育費用の支援など具体策を二つ挙げて回答した。

 タレントの清水国明氏(73)は、告示以降、都内各地で街頭演説を重ねている。

 政策の軸として掲げるのは、災害対策の強化。22日には、八丈島を訪問した。

 26日には、葛飾区内で安野氏と「合同演説会」を実施し、政策を競い合う場面もあった。

 元航空幕僚長の田母神俊雄氏(75)は「若い人たちから都知事選に出てくれと言われ、立ち上がった」とし、若者への訴えにも力を入れている。25日には新宿・歌舞伎町で、付近の繁華街で働く男女ら約100人に向けた演説会を行った。

 田母神氏が「都民の生活を守り、都民税を下げる」などと語ると拍手が起きた。笑顔で写真撮影に応じ、SNSに投稿してもらう。「若い人たちが政治に参加しないと社会はよくならない。ぜひ投票に行ってほしい」と呼びかけていた。