開会中の静岡県議会で2日、盲導犬のカドル君が産業委員会に同席した。視覚障害がある企業局経営課主幹、岩本多加臣さん(55)が質疑の補助員を務めることになり、カドル君に導かれて委員会室に入った。県議会では傍聴席に盲導犬など身体障害者補助犬が入ったことはあるが、県職員と委員会に出たのは初めて。

 カドル君はラブラドルレトリバーのオスで2歳7カ月。岩本さんは今年6月から電車と徒歩で一緒に県庁に出勤している。

 35歳のとき、「網膜色素変性症」と診断された。視野が狭くなり、視力も徐々に低下。4年前から白杖(はくじょう)と点字ブロックを頼りに歩くようになった。気持ちが沈みがちになったとき、妻と娘が調べてくれて全盲でなくても盲導犬を借りられると知った。日本盲導犬協会でカドル君を紹介され、5月から富士宮市の訓練センターで基本動作のトレーニングを重ねた。

 岩本さんにとって県議会のある本館は暗くてほとんど見えないが、「カドルが廊下の曲がり角を教えてくれました」。委員会の間は机の下のスペースに入り、岩本さんの足元で静かに「待機」。「仕事に集中することができました。首やお尻をなでて『グッド、グッド』とほめてあげました」

 一緒に暮らすうちに少しずつ信頼関係が生まれてきたように感じる。「仕事で悩んだときも、そばにいてくれると癒やされます。カドルと出会って、きっと何かが変わると期待しています」

 県人事課によると、県知事部局の障害者雇用率は2023年6月時点で2.65%。担当者は「障害の特性に応じて働きやすい職場環境を整えて支援していきたい」と話している。(青山祥子)