人気シリーズ「小学館の図鑑NEO」のポケット判から、「プランクトン」が出版された。小さな水の生き物たちの世界が、色鮮やかに詰まっている。企画したのは、島根大学の仲村康秀助教(39)=海洋生物学。「プランクトンがいなければ地球は滅亡する」という存在の大きさを感じることができる一冊だ。

 プランクトンは、目に見えるかどうかくらいの小さな水の生物というイメージがあるが、その定義は、流れに逆らって泳げず「水中に漂っている生物」のこと。「魚の子どもやクラゲだってプランクトンなんです」と仲村助教は語る。

 研究するプランクトンを子どもたちに知ってもらおうと、児童向け図鑑の出版を小学館に提案。プランクトンや底生生物の研究者らに声をかけ、59人の専門家が執筆した。

 登場するのはプランクトンや底生生物など500種類以上。ホタルイカやヤコウチュウなど光るもの、「脳食いアメーバ」と呼ばれる危険なもの、エチゼンクラゲや、サプリメントで使われるユーグレナ(ミドリムシ)、クロレラなど食べられるもの……と多彩だ。

 カタクチイワシの子どもをゆでて干したちりめんじゃこの中をじっくり探すと、エビやイカなどの子どもが見つかることも紹介している。

 図鑑では、地球の酸素の半分以上はプランクトンが生み出しており、プランクトンがいなくなると「地球は滅亡する」と説く。地球温暖化の影響で温かい海のプランクトンが東京湾で見つかるようになっていて、温暖化が進めば、これを餌とする南の海の魚が増えて、江戸前ずしのネタが変わるかも知れない、とも指摘する。

 仲村助教は「プランクトンはたくさんの酸素を生み出すので、海を大事にすることは温暖化の防止につながる。プランクトンを通じて身近な生態系の大切さを理解してほしい」と訴え、「ビジュアルの美しさも伝えたい」と話す。

 「小学館の図鑑 NEO POCKET―ネオぽけっと―『プランクトン クラゲ・ミジンコ・小さな水の生物』」は新書判、176ページ、1100円。(垣花昌弘)