高校野球界に貢献した指導者を日本高校野球連盟と朝日新聞社が表彰する「育成功労賞」に愛知県内から、星城高校(豊明市)の木下秋次さん(65)が選ばれた。これまで40年以上、母校の同校で野球部員の指導や生徒指導に熱心に取り組んだ功績が評価された。

 豊田市出身で、高校野球の指導者になりたくて教員になった。1年目の1981年、母校で念願の野球部監督に就任したが、いきなり指導の難しさに直面した。特待生を受け入れ始めたこの年、特待で入部した1年生と上級生の間に、あつれきが生まれてしまった。

 「1年生を中心にやるんだろ」。上級生たちはそう言って部活に来なくなった。木下さんは彼らの自宅を訪ね、説得した。「せっかく野球部に入ったのだから続けてほしい」。同じ野球部を卒業した先輩としての思いだった。一部は学生コーチや応援団として残ってくれた。

 5年目になって夏の愛知大会4強入りを果たした。監督や部長などとして指導やチーム運営に携わって44年目。強豪としての地盤を固めた。2000、04年には選抜大会21世紀枠の県内の推薦校に選ばれた。愛知県、東海地区の高野連理事も務めた。

 やりがいは、高校野球をやり切った生徒たちが立派な大人に成長した姿を見ること。部に残るよう説得して回った当時の卒業生が、大会を見に来ることもあった。「2人の息子よりも、他人の子の方を長く見ていた」と笑う。

 練習試合で土日も休みはなかった。これからの高校野球は、教員の働き方と教育の両立が課題になるだろう、と語る。今は高校の広報担当の傍ら、野球部グラウンドの整備などをしている。「良い高校野球人生が送れた。教え子と巡り合えたことが自分の支え」(渡辺杏果)